当日フォーラムの講師を務めてくださいました岩崎永一先生から、フォーラム全体の感想が寄せられました。
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今年7月下旬、上智大学で英語教育に関するパネルディスカッションが行われ、吉田研作先生が“Change the mentality
of teachers”ということを提唱していました。
同じく7月の下旬には、慶應義塾大学の日吉キャンパスでも英語教育に関するシンポジウムが行われ、中等教育の語学のクラスサイズの問題やネイティブの教員の安定的確保などをテーマに議論が行われ、その中で「英語”で”教える」、「英語”を”教える」といった問題が浮き彫りになりました。
二つのパネルディスカッションとシンポジウムに共通していることは、「英語”で”教える」、「英語”を”教える」ということのバランス、特にその中等教育段階での在り方と、そのための実践的かつ具体的な手法の問題でした。私自身そうした問題意識のもと、去る8月22日に行われたNPO教育情報プロジェクト主催の英語教育東京フォーラム(於・江戸東京博物館会議室)で、高校英語における活動中心の時間と意識的な学習の時間のバランスについて発表しました。
これは膨大なインプット量とアウトプット量を確保し、より自然な形で英語の習得を促す授業作りについての具体策を実践的に報告したものです。主たる内容は、生徒が積極的に参加し、生徒が主役の授業作りの中で、出来る限り否定的なインストラクションを抑え、生徒同士の相互作用による英語習得、およびそれを側面から支える意識的な学習の方法です。そのために普段行っている授業内容に加え、膨大なインプットとアウトプットを可能にする試験問題の作成法や英語の論理に沿った英検2級対策指導法や英作文の指導法についても言及しました。
今後の課題は、今回の発表でも暫定的には報告を行った高校3年レベルの長文の指導法、特に接続詞やdiscourse markerに重点を置いた指導法をより良く練り上げることです。また、発表後の質疑応答では、試験問題についてより一層コンテクストに重点を置いた作問をした方がよいという、有益なアドバイスが埼玉県の高校のベテランの先生よりありました。
午前中に行われた阿部一先生の基調講演では、accuracyやcomplexityの段階をも目指した実践的な指導法について触れられ、音読についても従来までの単調になりやすい音読から、短期記憶の保存にまで重点を置いた音読についての具体的な指導がありました。その根底には「教師の一方的な発話や板書が多すぎる。もっと生徒に発話とコミュニケーションの機会を」という阿部先生の一貫したお考えがあったものでした。
私の発表でも取り上げた英語の意識的学習と活動のバランスについて、阿部先生はより詳細に解説されました。現状の問題点指摘と併せて、fluency,
accuracy, complexityというキーワードを提示され、かつそれを、教室での実践に極めて近い形で示されたのです。理論と教室現場の双方に精通されたプロの技量をうかがい知ることができました。また、生の(
authentic )英語教材を中学生の段階からほんの少しずつ示していくことで、知識の多寡ではない、もっと根底的な動機付けを行うことが出来るというのも、中学から高校、大学までの英語教育を広い視野で見つめられ、かつ実践をされてこられた阿部先生の長い教歴から発せられたものだと思いました。
赤塚裕哉先生のアーリーバードの発表では、実践的なアクティビティについて発表がありました。日頃、赤塚先生が事務局を担当されている英語教員の研究組織「橋架村塾」での成果も示され、特に生徒が自然に興味を持って引き込まれるようなアクティビティの方法を具体的に示された点は、多くの参加者の共感を呼ぶものでした。
午後一次限目の青柳良太先生の発表では、開成中学高等学校の日々の英語授業を例にした興味深いお話がありました。生徒たちが授業外で、意欲的かつ効率的に自学自習が出来るようにどのように指導していくか、きわめて有益なお話でした。骨のある英語力のつけ方、そして、そのための独習への導き方について、青柳先生の一貫した理念と実践について傾聴することができました。開成高校の使用されている青柳先生編集の独自テキストの質の高さ、レベルの高さについても、参加者は大変な関心を持たれたていました。
今年の8月のe-pros英語教育フォーラムでは,「英語”で”教える」、「英語”を”教える」ということのバランスについて,各発表者のそれぞれの立場から、現場に即した報告がなされた点がじつに有意義でした。特に今回は発表者にとっても考えることの多い、非常に刺激的なフォーラムであったと思います。
江戸東京博物館会議室という非常に優れた会場の設定を始め、このような非常に有益な機会をお与えくださったNPO教育情報プロジェクト代表の大釜茂璋氏に心より感謝申し上げます。10年間に渡り財団法人日本英語検定協会の専務理事として、中学・高校・大学での現場と文部科学省の双方を視座に、日本の英語教育の実用性と骨のある地球的規模での知識人としての英語力の模索の第一線に立たれていた大釜氏がこうした形で、英語教育の今一番根本的な問題である「英語”で”教える」、「英語”を”教える」のバランスについてのフォーラムを主催されたことは大きな社会的意義を持つものと考え、心より感謝申し上げる次第です。
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