もっと身近に誰にでも!

フォーラムレポート

一覧へ戻る

英語教育東京フォーラム(2009.7.31)

見過ごされがちな単語指導と文法指導
   ―コミュニケーション重視の英語教育の中で
(阿部一先生の講座から)

                   大 釜 茂 璋


 阿部一先生は元獨協大学外国語学部、同大学院教授で、現在は阿部一英語総合研究所長として英語教育の発展に尽しております。阿部先生は長年にわたり文部科学省をはじめ、英検や各地の教育委員会、教育センターなどが主催する研修講師とし広く知られています。

 阿部先生はわが国の応用言語学の第一人者であり、また3年間に渡ってNHKラジオ講座「基礎英語3」の講師を務められことから根強いファンをお持ちです。またe-prosの英語指導法研修会でも過去数回講師をお願いしてきました。中学校から大学院まで、多くの場で指導してきて様々な指導技術を披瀝される阿部先生の講座は、それだけ説得力があるのです。

 今回の阿部先生の講座テーマは、「新学習指導要領における効果的な英語指導法― 基本語や基本的な文法事項をどう指導するか」に置いて、実践例をふんだんに交えながら、きわめて実践的な指導をしてくださいました。 講座のハンドアウトから、この日の講座の概要は次ぎの通りです。

 『今回はコミュニケーション重視の英語教育の中で、これまでうっかりすると見過ごされがちだった単語指導と文法指導の、基本的で具体的なものを取り上げたい。
ただし、単語や文法といっても、単純に昔の「訳読文法」のような文法に戻るのでは、「英語はやったけど使えるようにはならない」という、以前と同じ愚を冒しかねない。

 コミュニケーション重視の方向を大切にしつつも、英語を本格的にモノにするは、自分が教えている生徒たちに本当に必要な「基本語」や「基本的な文法事項」を厳選して、それらを質的にきちんと納得できて生徒自身の血となり肉となるように指導していくことである。 この効率化を図るフォーカスト・ラーニングが、これからはとても大事になってくる。それとこれからの指導法は、頭だけでなく、身体全体をフルに使ったスポーツ感覚がとても大事である。

 そしてその大事な基礎体力づくりに必要な栄養素がタップリと詰まっているのが、英語の基本語であり英語の基本的な文法事項である。(以下略)』 以上の趣旨のもと、次のような解説を試みながらの講座でした。
1.「まず本当に自分は英語を"使いこなせて使い切っているのか"をチェックしてみようと」して、下の日本文を英語で表現していきました。
 1.「この桃の皮はむきやすい」
 2.「お使いになるときは手前に引いてください」
 3.「飛行機は無事不時着したのか、それとも墜落したのか」
2.これからは生徒からの疑問・質問に適切に答えて、」その質問でレバレッジ効果を上げられるかが教師に求められる
  *上のような疑問解説
  *「彼はドアをノックした」
  *授業で何気なく使われている文 
    Do you know Ichiro? "Yes, I do."の問題
    I like dog and cat.は?
    "What is that?" に "That is a bag."は? 以下略

 これらの項目をいろいろな角度から指摘し指導した後、阿部先生は次ぎのように述べています。 今回のフォーラムではどちらかというと、具体的に動くというよりもまずは教師の意識の向上や考える力などを持っていただくのが中心だった。解説は出来る限り分かり易く行ったつもりでしたが、中にはちょっと難しい苦手なところと感じられた方もいたようです。 このような研修会ではどうしても具体的に、授業でそのまますぐ使えるようなものが好まれますし、その意味ではワークショップ形式で、実際にやってみるほうに目]が行ってしまうようです。フォーラムの後、あの場で取り上げた教室での単語の「1秒返し」のやり方や指導法を知りたいとのメールもいただきました。今度機会があったら「語彙力の増強指導テクニック」のいくつかを、その場で覚えて帰ってもらうワークショップというのも企画してもいいですね。

 阿部先生はこの度、えい出版社から「ベーシック英単語 ― 100の基本イメージで覚える」を刊行し好評をはくしています。他にも「コーパス口頭英作文」(共著/DHC)、「英語冠詞コーパス辞典」(研究社)、「基本英単語の意味とイメージ」(研究社)など多数の著書があります。
(おおかま しげあき NPO法人教育情報プロジェクト代表)

一覧へ戻る


top