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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2009.09.28)

学ぶは真似るに通じる
        大 釜 茂 璋(NPO法人教育情報プロジェクト代表)

 爽やかな季節の中でシルバーウィークを楽しんだ方も多いことでしょう。天高く、学習の秋、スポーツの秋と言われたものですが、最近はあんまり聞かなくなりました。何か慌しく時が過ぎて、じっくりその時の到来を待つといった気持ちの余裕をなくしているように思います。

 お彼岸の中日に宇都宮市までお墓参りに行ってきました。窓外の稲田は黄金色に輝いて、早いところは刈り入れが始まっていました。昔子どもの頃の刈り入れは一家総動員で大人も子どもも田んぼに出ては大賑わい。結いと呼んでいたと思いますが、隣近所の人々がお互いに協力し合う協同作業も楽しい光景でした。

 しかし機械化が進む現代では、コンバインが唸りをあげて刈り取っていくことから、収穫に喜ぶ人々の声が聞こえません。刈り取られて広々とした田んぼは子どもたちの手ごろな運動場と化し、あちこちで野球に興じる光景が見られたものでしたが、もうそんな素朴な景色も見ることはありません。時の流れは、こんなところにも変化をもたらし、必然、人の情感も変化していっているのだと思いました。それでもしっかり墓参りはしてきました。

 テレビで報道していましたが、ベネッセの調査によると、英語の苦手意識は中学生の、それも中1の後半から始まっているという調査結果は注目されました。

 あなたは英語が得意ですか、苦手ですかという質問にたいして、とても得意が8.0%、やや得意が29.5%ですから、英語を得意分野としている中学生は37.5%となっていて、やや苦手32.5%、とても苦手29.3%との比較では、61.8%の中学生が英語を不得意分野に置いていることがわかりました。

 中学校入学時、中学校でもっとも楽しみにしていることは英語の勉強と答えた生徒が90%以上ということを記憶していますが、それに比較してみて今回の調査の結果をどう解釈したらいいでしょうか。

 英語を苦手と感じるようになった時期は、今回の調査によると夏休みが終わり、中1の後半を示した生徒が26.6%と、極端に多くなっているところが注目されます。英語嫌いをつくる原因の一つに「英語のテストによる点数化」があげられていたことがありましたが、嫌いになった時期がこの原因とされる時期と符合しているのでしょうか。

 これまで中学校の英語指導では「中2の壁」という現象が指摘されていましたが、その壁が徐々に低学年化してきているというのでしょうか。いろいろ考えさせられます。

 私たちのフォーラムでもよく指摘されることですが、英語指導は点数で格差をつける前に、まず英語に関心を持たせる、興味を持たせる、英語に関心を持つことで世界に目を見開くことができる、見識が広くなるといった、新しい言語に対する目と姿勢を持つことに気づかせることが大切なことと思います。テストは理解の度合いを知るためのものとして利用するのが理想的ではありますが、なかなかそれで済まないところが現場を受け持つ教師の悩みです。

 そういうことから気づくことですが、フォーラムで講師を務めて頂くベテランの先生方の指導は、生徒たちに如何に関心と興味を持たせるかということに気を配っているということです。そのためにも教材に工夫を凝らし、指導法を考え、生徒一人ひとりの反応に気を使っていることがよくわかります。学ぶは真似るに通じるとはよく言われますが、こういうベテラン教師の研修会に参加し、自分なりに真似た授業を構築することが、英語嫌い・英語苦手の生徒を少なくする一方策ということを感じます。

 いよいよ爽快な季節の到来です。馬肥ゆるの秋でもありますが、学習にスポーツに、大いに汗を流して頂きたいものです。

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