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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2009.3.31)

英語指導法フォーラム終わる

                  大 釜 茂 璋


 教育情報プロジェクトが主宰する英語指導法フォーラムは、3月28日(土)午前10時から開催されました。会場は東京千代田区の日本教育大学院大学の特別講義室。

 大学の界隈は東京でも有数の桜の名所になっています。しかし開花宣言は出てもその後の開花状況はさっぱりで、咲いている枝もあれば蕾の硬い枝もあるといった、まさに個性豊かな気まぐれ春といった感じしまった冬のコートをもう一度引っ張り出すといった、全く季節にそぐわない寒い日が続いたものです。

 そんな中で開催された3月期フォーラム。今回のテーマはThink globally,Act locally 。とかく英語指導法の教師研修会といえば、解釈法だったり文法の指導法だったり、いわゆる英語学習のタスク面に集約されがちでしたが、今回は実際に英語を使う社会環境や現実問題に配慮しながら、言語の持つ意味を含めての指導法ワークショップでした。

 これらの事柄に思いを馳せながら、結局は語彙の指導法や解釈、文法などにも触れていきますが、単に英語を教えるという行為から、世界の国や地域の子ども達の様子を捉え、紹介するツールとして英語を使うという指導法を研修したものです。

 今回の講師ならびに講義題は次ぎの通りです。
1.春日部市立中野中学校の川村光一先生。川村先生は現役若手教師による自主研究会「橋架村塾」を主宰しています。講座テーマは「国際化の中での国際貢献について」と「飛躍的に4技能が伸び、学校全体のレベルが上がる『三年間を見通した積上げ式学習法』。

 このようなフォーラムなどを通して、アジアの恵まれない国や地域の子どもたちに救いの手を伸べる方法を考えていきたいという、行動を取るための具体的な提案などもありました。

 積上げ式学習は、川村先生の考案した「弾丸インプット」を活用し、基礎から応用まで、順次積上げ式のスペリングテストなどを通して徹底的に指導するやり方です。この方式ならば生徒は気づかぬうちに知識が身につき、3年の春を迎え卒業までには、教師が教えようとしたことはほぼ完全にマスターできるという結果を招いているのです。

2.栃木県鹿沼市立東中学校の笠井剛清先生は、教育情報プロジェクトでは今回初めての発表でした。講座題は「マンホールチルドレン ~モンゴルの子ども達は、今」。公立中学校には英語好きの生徒、どちらかといえば嫌いな生徒、そして全く英語を苦手とする生徒と、いろいろなレベルの生徒が混在しています。

そして、それぞれの生徒のモチベーションを掘り起こしながら、どうやって英語学習に目を向けさせるか。これは英語教師にとって永遠の課題でもあります。

 そこで笠井先生は、生徒の心に火をつけるストラテジーとして、マンホールに住みながらも、健気に生きていくモンゴルの子ども達の映像を見せることで生徒達の感情を動かし、これをきっかけにした英語指導法を実践したものでした。貧しさのあまりマンホールにしか住むことが出来ないモンゴルの子ども。豊かな日本でぬくぬくと生きている自らの姿を省みるとき、その格差はじつに心を強く揺さぶる光景でもあったのです。

英語の授業で、映像を通してこの現実に側面した生徒たちは、文法はどうでも、語彙力不足はあったにしても、何か英文でそのときの気持ちを残して見たいという行動が、英語を勉強するというモチベーションに繋がっていったものでした。教材はテクニックを使うものではなく、そこに居る人の感性を促し、大きな感動を呼ぶものでなければ効果が薄いことも示唆していました。このような教材の選び方にも、教師としての勉強、気の使い方が生きていることを知りました。

3.NHKラジオ講座や多くの指導、研修会の場でリスニングをテーマにした指導で知られる西垣知佳子先生(千葉大学)は、今度の参加者の殆どがお馴染みの講師です。

 今回の西垣先生の講演テーマは「Globalに考えるリスニング」でしたが、まさに今回のフォーラムのメインテーマGlobalに相応しい、Bette Midlerの「FROM DISTANCE」を教材に、徹底的な耳からの英語指導をしてくださいました。

 音楽を通して学ぶ英語は、学ぶ人の気持ちを奮い立たせ、あるいは静かな心境を醸しだし、英語によって知ることのできるリズムや感動をじっくりと味わうことが出来るのです。教材に選ばれた英語の歌詞は、和訳指導、語彙指導、あるいは文法の指導に結びつき、それだけに学ぶ側の英語への親しみや受け入れ方など、感動とともにそれぞれをマスターできることも理解できました。

 それは笠井先生の講座で使った「小さなうた」からも気づきましたが、授業を通して音楽の訴求する力は、いわば音楽の奥に潜んでいる、言葉は適しませんが魔性のような指導力、理解力へ結びつくプラスアルファがあることを知りました。いい気持ちにさせてマスターさせていくような・・
(おおかま しげあき NPO法人教育情報プロジェクト代表)

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