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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2008.03.04)

和製英語とカタカナ語(1)  前田 正晶

 私はこの手の言葉が好みではないが、面白いとは感じている。その中には漢字・平仮名・片仮名・ローマ字と多くの言葉を含んでいる日本語の融通無碍な点というか素晴らしさを見出すとともに、新たな言葉を創造してきた先人と現代人の知恵と創造性を見る思いがするのだ。
 その一方で、そういう言葉が日本語と日本人の英語に対して必ずしも良い影響を与えていないことも危惧する。すなわち、時としてこういう言葉が本当の英語だと錯覚を起こす人がいる例を何度も見てきたからである。
 さらに本当は英語ではないのにも拘わらず、すでに日本語というかカタカナ語として戸籍を得てしまっているものが多く、罪なき一般人に、「これは英語だろう」と思わせるだけの迫力があるのだ。
 その点にも疑問を感じてしまう。私はカタカナ語を見たら全て疑っても良いと思っている。
 これらを使うのは各人の好みと自由裁量であるし、日常会話の中で使っても構わないと思うが、そういう言葉であるという認識だけは持っていて欲しい。
 何故この主張をするかと言えば、言葉は耳から入った場合の影響が強いので、テレビなどに登場するコメンテーター、有識者、学者、スポーツ等の解説者、議員等の社会的に認知されるかあるいは尊敬されている人たちが誤用すると、一般人はそれを素直に受け止めて、英語として使ってしまう結果になる点を好ましくないと考えているからである。
 この際、何も知らずに使っているテレビ・タレント(これも造語だろうと思うが)たちの悪影響も無視できないことも言っておきたい。
 そこで、その分類であるが、私は“和製英語=造語”、“ローマ字式発音”、“言葉の誤用”の3種類に分けていくことにする。

和製英語=造語:
 此処には素晴らしい造語もあるが、時には何とも不可思議で且つ面白いなと興味を引く例もあって、それを発見するのが楽しみである。
 本論に入る前にその面白い例を挙げてみる。20年前まで住んでいた藤沢市に”Hand Made Coffee Shop”という看板を掲げた小さなコーヒー屋さんがあった。
 これは「手作りのコーヒーを売る店」で喫茶店ではないことは外から見ても直ぐに解った。だが、生半可に横文字になっているので違和感を覚えた。
 何故かと言えば、これでは「コーヒー・ショップ」を手作りしたことになると思ったのである。では、これを英語にしてみようと思ったが、意外に難事業だった。
 おそらくこの店主が言いたいことは、「コーヒー豆を自らの手で炒めて挽いていること」なのだろうが、これを全部訳すと”We roast and grind coffee beans ourselves here.”とでもなるのだろうか。
 だが、こんなに面倒なことを言わなくて”Hand Made Coffee”だけで十分だったと思う。
 因みに、スターバックスもタリーズも”handcrafted”という言葉を使って「手作り」を表している。私ならば大きく”Handcrafted Coffee”という看板を掲げ、その前に小さく”Enjoy our”と書いておくだろう。
 私が見た限りでは少なくともアメリカでは、「コーヒー・ショップ」が自ら店名に”Coffee Shop”を名乗ることが少なく、何か別の固有名詞を名乗っているが普通だからである。
 ホテルでは”Coffee Shop”と言えば”Main Dining”ではなくて、軽い食事を取れる食堂を指すことが多く、そこには概ね何らかの固有名詞が店名としてつけられている。
 上記のアメリカのチェーンでは看板にはCoffeeまでで、Shopとはなっていない。その違いがここにも現れていて、この手作り店でも几帳面にコーヒー・ショップと名乗って正確且つ万全を期しているのだろうと思う。これぞ文化の違いといいたいのだが。
 会社名にしたところで、紙パだけを例にとってもトップ10に入るような大手で”Paper”を社名に入れているのは世界最大手のアメリカの”International Paper Companyくらいのもので、他社の例を見ても北欧の”StoraEnso”、アメリカの”Weyerhaeuser Company eorgia-Pacific”、”Kimberly-Clark”、”MeadWestvaoc”、”NewPage”、ノルウエーの”Nor ske-Skog”等々である。
 一方、我が国で製紙と入っていない社名の製紙会社があるか?
 そこで、思いつくままに例を挙げていくが、順序不同であることをお断りしておく。
 なお、自動車と野球用語は余りにも多いので、別途取り上げる。(つづく)
【前田正晶さんは長い間、英語使うビジネスの第一線で活躍をしてきました。前田さんの英語学習法から実際に英語を使っていた頃の思いをこめた異色のエッセイです。わたなべりゃうじらうメイル・マガジン「頂門の一針」より転載、主宰者ならびに執筆者許可済み】

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