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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2008.03.15)

英語学習にはまず本を読もう
          大 釜 茂 璋
 White dayの日の東京は生憎の雨で明けました。それでもやはり春の雨。しっとりと暖かく、新芽が出かかった公孫樹並木にも生気を感じました。よく見ると、しだれ柳の一本一本に緑の芽が吹いて、微かな風に揺れて薄緑の毛糸のようでした。

 St.Valentine's dayにチョコレートやクッキー、中にはお酒などをプレゼントしてくださった方もいて、本当に嬉しく、気持ちが和みました。感謝の気持ちを手紙に託して、何とか14日に到着するようにと、遠い地域の方には11日あたりから一日ずつ日をずらして発送しました。到着が15日になっては、文字通り“十日の菊六日の菖蒲”になってしまいます。

 父親の仕事の都合でアメリカ在住の長かった甥っ子が昨年の夏帰国し、この春高校に入学しました。英語の世界での生活が長かっただけに、やはり英語教育の熱心なところに進学したいと勉強を続けていましたが、何とか目的が適って合格できたと喜んでいました。

 国際化の進捗はますます進み、国際語としての地位を占める英語に強くなることは素晴らしいことではあります。しかし、それはそれでめでたいことですが、水を注すようだけれどとしながらも、英語を話せることと、英語を使えることとは意味が違うと訓示めいた話をしてしまいました。英語が話せるとばかり、内容の伴わないことをしゃべりまくっているだけでは、軽率のそしりを免れないことは、これまでも何回となく見て来たし、聞いても来ました。

 英語だろうが日本語だろうが、言葉には品格が滲んでいなければならないからです。ただ上辺だけの会話は軽薄にしか見えませんし、英語だけとは限りませんが、口角泡を飛ばして話したところで、それは人間性を疑われるきっかけとなります。

 それではどうしたらいいのかと質問されて、おうおうよくぞ聞いてくれたと誉めたものです。

 そのためには兎に角本を読めと。何でもいいから手当たり次第に本を読みなさいと。小説でも童話でも、あるいは歴史ものでも科学ものでも、旅行記だっていい。自分が興味をもったもの、面白いと感じたもの、あるいは小学生のために書かれたものだっていいんだよと。読むことによってimaginationが膨らんでくるから、そこを大事にしながら英語力をつけることが大事なんだと。

 なにしろ長いアメリカ生活の中で、日本語の本を極端に読んでいないことが、彼の大いなる弱点であることを私は以前からは知っていたので、この忠告は当人にとっても誠に的を射たものであったようです。それだけかれにとっては弱点を見抜かれたと思ったのでしょう。根は素直ですから。

 それからというもの、毎日毎日手当たり次第に本を読んだようです。何でそれが分かるかといいますと、ときどき、netで送信してくるメールの文章が、この頃はしっかり起承転結を踏むようになり、筋道が立ち、最近では情景描写などにまで触れて余裕すら感じられるようになったからです。

 やはり日本で生活しているわれわれ日本人の言語の基盤は、日本語そのものにあります。逆立ちしてもnative speakerにはなれない私たち日本人であればこそ、国際化の中でまず品格ある英語使いになる努力をしなければなりません。そのためには、日本語の本に出来るだけ多く接することが大切であることは間違いありません。

 素直に私の助言を受け入れて本を読んでいる姿を思い、日本人をしっかりわきまえ、品格ある英語を使うことの出来る日本人になれよと、これからも口うるさく見守っていきたいと思います。

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