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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2008.03.21)

和製英語(=造語)カタカナ語(5)   前田 正晶

これまで「和製英語(=造語)カタカナ語」について論じてきました。しかしこの両者には似通った面もあるので、混乱を防ぐためにここで振り返って整理してみることにします。

◎カタカナ式発音(ローマ字読み):
恣意的な読み方と言っても良いでしょう。これは英語学習上の問題でもあり、私は排斥したいと考えます。その前に私が考える具体的な例を少し挙げておきます。

「新人」の意味で使われる「ルーキー」=“rookie or rooky”は、「ルッキー」で
しょう。プラスティックの総称として普及してしまった「ビニール」=“vinyl”は、「ヴァイニル」です。安全の意味で使われている「セキュリティー」=“security”は、限りなく「セキュアラティー」に近いのが英語です。

私がこれらの言葉を嫌う理由は、それに耳が馴れてしまうと外国人の話し方についていけなくなることと、相手にも聞き取って貰えないことが多くなるからです。極言すれば「美しくない」から、とも言えます。
これらの発音が外国人に絶対に通じないとまで言いませんが、出来ることならば原語に近くして欲しいのです。

但し、日常の日本人同士の話の中で「英語ぶった発音」をしないようにしなければならないと自戒すると同時に、他人にもそのように強制したいものです。
カタカナ式発音で良いと思います。原語のままでは「気障」であるだけでなく、聞く人によっては不快感を覚えるからです。

私はしかるべく、「本当の英語」とカタカナ式発音の両方とその違いを習得して貰いたいものと思っています。ではあっても「本当の英語」の発音を何処の国の、どのアクセントを取るかは慎重であるべきでしょう。だがこれには、学んだ学校次第で、選択権がない場合もあるでしょう。

◎和製英語=造語:
これは日常の会話で一般的にすでに戸籍を得て広く使われているものと、本当は(?)の英語ではこういう言葉であるという認識を持って使えるように、しっかりと両者の違いを学んで欲しいものです。具体例を挙げておきます。「フリーサイズ」=“free size”は日本語であって、英語では“one size fits all”という長たらしいものです。「スケールメリット」=“scale merit”を英語にすれば、“advantage or economy of scale”辺りになるでしょう。「プライベートブランド」=”private brand”も日本語で、英語では”private label”なのです。

私がこれを嫌う理由はすでに述べたたように、これらの中には日本語化されているおかしな言葉も多数あるからです。ここには「ナイーブ」=“naive”のように、「言葉の誤用」も入れて良いと考えます。
これは「純真」や「無邪気」ではなく「そう言う人だと貶している言葉」で、うっかり使うととんでもないことになります。

ここで、これまでに言ってこなかったことですが、使って欲しくない表現もありますので、日頃私が警告してきたものを一つあげておきます。それは“You'd better ~."です。これを日本の学校教育では、「toを伴わない不定詞形=infinitive」として教え込みます(私はそう教えられました?)。意味は「~した方が良い」とも教えます。

ところが困ったことに、これは実際に英語の世界では「軽い命令形」として使われるものなのです。だが、日本の学校教育を受けてきた方は何の悪意もなく、外国人との対話でこれを濫用されることが多いのです。

彼らは「お節介な奴」か「人に説教する気か」と受け取り、不快感を示します。実例としてはある英語国で、商社の新任の支店長が得意先を挨拶に回り、これを善意で多用されたそうです。
すると2~3日後に現地人の副支店長が支店長を別室に招じ入れて、「貴方はお節介で失礼な奴と得意先からやんわりと苦情が来ている。そこで今後は軽々に"You'd
better ~."を使わないで欲しい」と忠告されたそうです。
支店長はいわば驚愕したそうです。これなどは当に「無意識の比例」であり、日本の学校教育の典型的な「会話をするためには障害となる」教え方でしょう。脱線していまいましたが、ここでは言葉の違いを確実に覚えて貰いたいと申し上げて終わりにします。

【前田正晶さんは長い間、英語使うビジネスの第一線で活躍をしてきました。前田さんの英語学習法から実際に英語を使っていた頃の思いをこめた異色のエッセイです。わたなべりゃうじらうメイル・マガジン「頂門の一針」より転載、主宰者ならびに執筆者許可済み】

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