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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2008.04.30)

e充実の4月期フォーラム終わる
        大 釜 茂 璋(NPO法人教育情報プロジェクト代表)
 NPO法人教育情報プロジェクトが主催する4月期英語教育フォーラムは、4月29日昭和の日、エデュケーショナル ネットワークなどの後援を得て、東京・千代田区二番町の日本教育大学院大学を会場に開催されました。新緑が爽やかなこの日、朝10時からの講座開始に会わせて、地元東京、周辺地区各県はもとより、仙台、栃木、群馬、新潟、静岡といった遠方からの参加者が、総計約50名を越す英語教師、大学生・大学院生等が集いました。
 今回の研修会の講師は、八洲学園高校の伊吹保昌先生、東京純心学園中高校の荒井恵子先生といった若手実力者、それに英語教育界で知らない人はいない長勝彦先生。その調査分析がら日本人大学生の英語力低下に警鐘を鳴らす日本リメディアル教育学会会長の小野博先生(独立行政法人NIME教授)に、実践的英語指導法のわが国第一人者北原延晃先生(東京都港区立赤坂中学校)といった、錚々たるメンバーでした。
 それぞれの講師にはその講師独自の教育論や指導に対する見識があり、またそれに基づいた指導教材や指導法があります。それらは年齢が若いとか、教職歴が長いといったことから決め付けられることではありません。いろいろな講師による多くの角度や接点から対処した指導法は、その講座を聴く人の捉え方で、何種類もの指導法となって活かされるものです。
 その学校の置かれた立場や、あるいは学校の方針・主張など、それに添った教育を実践することで、社会に有為な人間を育てるということであり、素晴らしいことです。学校によっては有名高校や大学に進学させることに価値観を持つところもあります。またある学校は、進学実績よりも人間としての生き方を身につけることを優先するところもあります。人が学ぶ目的は千差万別で、当然そこには価値観の優劣の差はありません。
 今回のフォーラムで私が特に感じ、特に見えたことは、各講師の勤務する学校の教育方針や環境に合わせ、またそこに入学してくる生徒達の性格や能力に合わせて、それぞれに教師は懸命に指導法を考え、教材制作に努力してい姿でした。
 これは誰もが大いに学ぶことのできる姿でした。教師自らが勉強をし、自らの教育実践をこのようなフォーラムで発表することは、それぞれの講師がここに至るまでの努力とそれなりの勇気が大切です。これら講師の発表を聴くことから、自分ならば何を学び、どう消化して自分の知識であり経験へ高めて行くかが大事なことでしょう。
 価値観が異なり個性が尊重される現代社会において、教育にたいする社会的期待も大きくそして千差万別です。こういうときにあたり、指導法もこれが一番いいというものもありませんし、これまでの指導法が風化してしまったというものでもありません。今回のフォーラムで北原先生のお話の中に、たとえ同じ講師の同じ内容の講座を何回聴いたとしても、その都度違った受け取り方があり違った学び方がある。それは講師とともに聴講する側も成長し環境も変わり、相応に受け取り方も変わってくるものだということに触れていました。
 ちょっと話は逸れますが、これは「本を読む」という行為と似たところがあります。その本は前に読んじゃったと言って、二度目には手にしない人を見かけることがあります。内容のある本は、10回読めば10回の新たな発見があり、10回の感動があるのです。それはe-prosフォーラムのような研修会においても同じことが言えるのです。繰り返しほど新鮮なものに出くわすチャンスでもあります。
 今回のフォーラムで特に注目されたのは、長勝彦先生の特別講座「小さな国際交流」でした。長先生は、奥様が書家ということから、1991年から2004年まで、後にお嬢様の絵画も一緒になって、海外各地での展示会を開催してきました。イギリスを皮切りに、オーストラリア、スペイン、ドバイ、チェコ、アルゼンチンなど多くの国での開催は、まさに私財を投げ打っての民間人による文化交流でした。英語の教師として、教科書に出てくる外国の地は全部自分の足で訪れ、自分の目で確かめるという長先生の若い日の決意が、後半からは奥様と二人のライフワークとして、しかも卓越した奥様の力を得て目的を成就し、見事に花開いたものでした。
 今回は時間の都合でイギリス、オーストラリア訪問の場面が主たる紹介でしたが、中学校教師としての現役時代からの行動は、英語教師としての生き方を示唆してくださったと、この日参加した若い教師たちの大いなる感動を呼びました。
 小野博先生の報告も、きわめて大きな問題を投げかけていました。先生が会長を務める日本リメディアル教育学会が、ここ数年にわたって調査分析した結果を報告したものです。大学生の英語力の低下は日本語力の低下の結果によるもので、複合的な原因をつきとめ、これに早急に対処しなければ国全体の力を阻害しかねないとの問題点提起でした。このような数字に基づいた学力低下とその対策は、e-prosフォーラムだけではない、もっと広く多くの人々に訴え、聴いてもらう必要があると思いました。これは一つ英語だけの問題ではない深刻な内容でもあります。

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