もっと身近に誰にでも!

フォーラムレポート

一覧へ戻る

英語教育東京フォーラム(2008.06.30)

東京都公立小・中学生対象学力調査の結果から
大 釜 茂 璋  (NPO法人教育情報プロジェクト代表)

 今年1月、東京都教育委員会が実施した「児童・生徒の学力向上を図るための調査」として行われた公立小中学校対象の学力調査の結果が発表されました。

 これは都教委が、児童・生徒一人ひとりの各教科の学習指導要領に示された目標や内容の実現状況を把握し、それを指導方法の改善に結びつけることにより、「確かな学力」の一層の定着と伸長に生かすことを目的に、小学5年生、中学2年生の全員と、小学4年と中学1年を抽出して実施したものです。

 「確かな学力」の伸長を図るための調査(問題解決能力等に関する調査)は都内公立小学校5年生の全員と、都内公立中学校2年生の全員が対象となりました。また「確かな学力」の定着を図るための調査(基礎的・基本的な事項に関する調査)は、抽出校及び希望した小学校の4年生、同じく中学校1年生が対象となって実施したものです。

 調査の結果から、「確かな学力」の伸長を図るための調査では、長い文章を読んで内容を把握することや、情報を整理して判断をすること等に課題があり、活用や応用についての指導が必要であることが指摘されています。

 そして「確かな学力」の定着を図るための調査では、小・中学校とも基礎的・基本的な事項の定着状況は、全体的に概ね良好の結果と出ています。

 これらの結果を見て顕著なことは、小学校でよく理解していない分野は中学校でもそのまま理解が乏しくなっていることです。それは少数の足し算や引き算で、位をそろえて計算するところが、学年が上がっても同じように間違えていることからわかります。基礎基本が疎かになっているのです。

 学習したことの日常生活での応用力を確かめる「問題解決能力テスト」では、長文の内容の把握や情報の整理からの判断力が劣っていることがわかります。

 この結果から授業改善の視点として都教委は、次のように指導しています。
(1)より分かる授業や楽しい授業の創造
1.児童・生徒が自分で調べたり、考えたりする活動の機会を充実すること
2.日常生活との関連を図った教材を工夫すること
3.体験的・問題解決的な学習活動を工夫すること
(2)個に応じた指導の充実
1.つまづきを把握し、一人ひとりの習熟の程度に応じた指導を充実すること
2.補充的な学習、発展的な学習など、少人数指導を活用した組織的な指導を充実すること
3.学習内容・方法の系統性や継続性に配慮した指導を充実すること

(3)児童・生徒の読解力を高める指導の工夫
1.接続語や文末表現、重要語句といった手がかりをもとにして、内容を的確にとらえさせ、段落ごとのつながりや相互関係を考えさせ指導すること
2.国語科だけでなく、各教科において充実すること

 この結果を見ていると、小学校でつまづいたところは中学生になっても、ほぼ同じところで同じようにつまづいていることがわかります。それは恐らく高校や大学に進んでも、同じような傾向をたどり、やがて苦手を意識するようになっていくことが考えられます。どんな教科に関わらず初めの指導とその定着が大事であり、そこがうまくいっていないとなると後々まで尾を引くということを物語っています。

一覧へ戻る


top