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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2008.07.11)

畠山雄二先生的指導法から
大 釜 茂 璋(おおかま しげあき)

 7月期のe-prosフォーラムで講座をお持ちくださる畠山雄二先生は、東京農工大学准教授という肩書きから、英語指導者研修には異色の先生のように思われているようです。しかし畠山先生は、知る人ぞ知る情報科学の先生(博士)としてばりばりの英語指導者。専門は理論言語学です。

 先生の著書には『情報科学のための自然言語額入門:ことばで探る脳のしくみ』『ことばを科学する:理論言語学の基礎講義』、あるいは『言語学の専門家が教える新しい英文法:あなたの知らない英文法の世界』といった、理工系大学である東京農工大学の先生らしくない(失礼)著書を沢山刊行されているのです。

 と言うのは7月期フォーラムの案内を見て、「どうして農工大の先生ですか」とe-pros事務局に質問をしてきた常連の参加者がいたからです。今回私は、畠山先生とは何回もメールでコンタクトを取りましたが、返ってくるメールが如何にも洒脱でユーモアがあり面白いのです。文章もじつに平易で分かり易く、そのとき私は、「まるで現代の寺田寅彦だ」と思ったものです。

 問い合わせてきた先生にもそのことを話し、著書の紹介をするとともに、ぜひぜひ聴講をしたほうがいいと参加をお勧めしました。これも知る人ぞ知るプロ級の腕前でギターを趣味にする畠山先生。いただいたメールの中で、今度のフォーラムに臨む気持ちを次のように記しています。

「(私の講座は)何はともあれ、ちょっと変わった講演になるかと思います。ボデ
ィーブローのように、後からジワジワ♪と効いてくる、そんなトークにしたいと思
っています」

「えっ? そんな話をするの?」と、オーディエンスというか、フロアーの人たちは思うかもしれませんが、せっかく私に声がかかったので、他では聞けない『学問ってこんなにワクワク♪するもんだ~♪』と思っていただける、そんな話にしたいと思っています」

「中高校の先生も、『学問をやっている』という気持ちがなくなったら、教師としても既に終わりだと思いますので・・・」

 アップ‐テンポ?な楽しいメールの中に、中高校の先生方への啓蒙も含まれていました。

 先に『e-pros通信』でもご紹介した、秋田カオリ先生と共訳の著書「大学生のための成功する勉強法」も、大学生を対象にした本と思われがちですがそんなことはありません。学校の教師でも一般企業のビジネスパースンでも、学ぶ多くの人々の共通の悩みや疑問に対応できる面白い内容でした。
 
 この本に「どうやったらうまく勉強ができるのか:簡単な方法とそのまとめ」という項があります。一部引用してみます。

*引用はじめ (  )内は筆者補足
 短い時間で、ある本を端から端まで全部読んでみたいと思っているとしよう。そうしたら、あなたは、部屋に閉じこもって、最後の1ページを読み終えるまで外に出ることはしないであろう。理屈から言えば、本の最後まで読もうと思っているのなら、その方法が一番である。(しかし日常生活の中にはそれを中断するいろいろな誘惑が出現する)

 本や論文によっては、本当に面白く、寸暇を惜しんで読んでいたいというものもあるだろう。でもその一方で、ほとんど読むのが義務としか感じないものもあり、「何でこんなもんを読んでいるんだろう・・」という気になったりする。

(たいていの学生がある時点でやりすぎたり、ある時期に課題が集中してスケジュールが途中破綻し、挙句の果ては勉強が手につかなくなってしまう)そういった学生は、自己管理がほとんどできていないにもかかわらず、自分たちは劣悪な環境の犠牲者であるとか、外からの圧力の犠牲者であるとか主張したりする。成功するにせよ失敗するにせよ、その原因を自分の都合のいいように考えるのが人間というものである。

 私たちは一般的に、成功は自分の手柄だと考え、失敗は自分以外の外的な要因、あるいは他人のせいだとしたがる。例えば次のようなセリフを吐きながら。「そもそも設問の書き方がよくないよ」「だってちゃんと教えてもらってないんだもん」「実際のところひどい風邪を引いていたし」「どこが重要なのか誰も教えてくれなかったし」

(やらなければならないことがうまくいかなくても、それを正当化することは可能です)うまくいかなかった場合、あなたはそこから立ち去り、「こんなこと僕にやれなんて無茶な話だよ。できないのは僕のせいじゃないよ。第一、僕はできるだけのことをしたんだし」と、心の中でつぶやくことでしょう。
(そんなことを心の中でつぶやいたところで、なんら生産的ではない)あなたがやるべきこと、それは、やるべきことに優先順位をつけ、それで上位のものを片づけることです。やれることをしっかりやること、それがあなたのやるべきことなのです。*引用おわり

 この引用から「学生」を「あなた自身」でも「私自身」でも、言葉を入れ替えれば、じつにぴったりとわが身を振り返ることができるのです。任用された若い教師が、あれもこれも、なんでも教えなければならないと張り切って、どうも最後までいけそうもないという段階でパニックに陥ったなどということはよく聞く話です。用意周到にしたつもりでも、それは誰にでもあることです。何を優先するか。大事なことは、教えることのpriorityをしっかりわきまえることだと思うのです。

 このような主張は、畠山先生の著書のいたるところからうかがい知ることができます。7月27日の研修会では、参加者のみなさんの悩みや疑問、いろいろな課題などを通して、フロアー参加型の充実した勉強会にしたいと先生は話しています。ボディーブローのように後でジワジワ効いてくるような研修。得るものが多いはず、今から楽しみです。

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