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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2008.07.11)

夏こそ自己啓発の季節   
 大釜 茂璋(NPO法人教育情報プロジェクト代表)

 "夏を制する者は入試を征す"などと言えば、大学全入時代を迎えた今日ではちょっと古いと笑われそうです。かつて大学入試が「受験戦争」とまでいわれた時代、ほんの数年前までのことですが、その厳しさに打ち勝って見事合格を果たすには、学校が長期の休みに入るこの夏の期間をどう積極的、かつ効果的に過ごすかが雌雄を決するという、まさに受験生の頑張りを鼓舞するために使われた言葉でした。

 しかし考えてみれば夏休みだからといって、長期間、自己啓発をすることもなく無計画に時の過ぎ行くままにのんびり過ごしていては、それは必ずしも受験生でなくても知力・体力ともに衰えることは間違いないようです。

 同じことは教壇に立つ先生方にも言えることです。夏休み中に教師を対象としたいろいろな研修会やセミナーが開催されることは生徒たちもよく知っていて、中には自分を指導してくれる先生が、どこでどんな研修会に参加しているかも把握している生徒もいると聞きます。

 そしてそういう生徒こそ9月の新学期明けは、それは英語に限らずどんな教科でも同じですが、学んで来たであろう指導法に期待して教室に臨んでいるといいます。特に学習塾に通っている生徒にその傾向があると聞きます。ちょっと緊張する話しですね。教師も実力の時代到来といわれる所以かも知れません。

 ところが先日開催した7月期フォーラムに参加した若い先生からも、これと似たような話を伺いました。月曜日の1時間目、中学2年生の授業が終わったら生徒の一人に、「先生、昨日はどこかの研修会にでも参加したのですか」と聞かれたというのです。 「どうして?」と聞き返すと、今日の先生はすごく自信一杯で、いつもと違う張り切りようだったって言われたというのです。自分ではいつもと同じにように授業をしたつもりなのに、生徒はちゃんと見抜いているんですねと笑っていました。

 そんな話を聞いたところで、先日のサンケイ新聞の声欄に次のような投書を見つけ、教師という職業は、いつの時代でも同じ棚と感動しました。「私の進化」というテーマに寄せられた東京都小平市に住む元教師、乙幡俊之(65歳)さんという方からの投稿でした。

『教育再生の鍵は教師の質の向上にかかっている。
 教師は夏休み、日常の教育活動から解放される。部活動、林間学校、プールでの指導などに汗を流すのだが、その合間を縫って夏に行われる全国規模の研修会や研究集会に出かけ、自らの教育力のアップに励む教師がいる。

 私は現役教師だったころ、夏休みこそ自分の教育力アップする好機だと考え7日間ほど、授業の実践分析講座などに行ったものだ。(そこでは)一流の学者や実践家と直接対話できたことが、秋以降に授業を行っていくうえで大きな示唆を与えてくれたと思っている。

 (現役の教師たちは)子ども第一で夏休みも忙しい日々だろうが、有給休暇を取り、また費用も自費だろうが勉強に励んでほしい。

 それがかけがえのない財産になり、教師力アップにつながる。秋からの教育実践に生きてくる。
それは次代を担う子どもたちにも、好影響を与えるのは間違いないだろう。
― サンケイ新聞7月31日号より  (  )内はe-prosで補足
 
 夏を制するということは、自分で自分を制するということです。9月の新学期、「先生、夏休み中はよく勉強しましたね」と生徒から拍手を浴びるような、そんな夏休みを送りたいものです。昔から、勉強する教師の下から優れた生徒が生まれるとも言います。

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