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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2008.10.4)

絵本を教材に使う温もり 
       大釜 茂璋(NPO法人 教育情報プロジェクト代表)

『e-pros通信』10月2日号で、"絵本"を教材にした英語指導で成果をあげている東京純心女子中高校の荒井恵子先生を紹介したところ、絵本を教材にすると聞くだけで、とてもほのぼのとした教室の光景が目に浮かびますと、メールを送ってくださった方がいました。

たしかに"絵本"から受ける語の響きは、まさに母親のふところに抱かれているような温もりや、穏やかな懐かしさを髣髴させてくれるものがあります。それは日本のお話しであろうが、海を越えた外国のお話しであろうが、同じような郷愁を誘うのです。そういう穏やかな心境を誘う教材で勉強をすると、強い興味とともに教える内容がスムーズに受け入れられる何かが働いているような気がします、とも書かれていました。

そして、先日の朝日新聞の読者の声欄に、絵本を読み聞かせる母親の投書がありましたと、次のようなコピーを添付してくださいました。洋の東西を問わず、絵本は幼い子どものための本という感覚が強いのですが、内容の解釈や捉え方次第で様々なことを教えてくれます。

送ってくださったコピーの投稿者は、3歳の息子を持つ37歳の看護学生。北海道岩見沢市に住む森嶋敦子さんという方でした。毎晩寝る前に絵本を読んであげる優しいお母さん。先日「かさじぞう」を読んで聞かせたときのことです。

ある年の大晦日。町へ笠を売りに行ったおじいさんでしたが、笠が一つも売れずに帰る道すがら、寒そうに立っている道ばたのお地蔵様にその笠を被らせて帰って来たという、日本人ならば誰もが聞いたり読んだことのある、あのお話しです。

家に帰っておばあさんに話す場面で、3歳の息子は「またがんばって作ればいいよね」と、目をキラキラさせながら言ったというのです。全編を通してここが一番気にいったらしい。

「隠れた善行」がテーマのこのお話しは、やがてお地蔵様がお正月の餅や魚などをどっさり運んでんできてくれてメデタシとなるところがハイライトになりますが息子は違ったと、投稿した森島さんは驚くのです。「情けは人の為ならず」をそれとなく教えてやろうと思っていたのが、当てが外れたということです。

『自分の力を他に与えることを素直に嬉しいと感じる息子の心は素晴らしい。「また作ればいいね」と言う純粋な心を大切に育てたいと思った』と投稿者はいうのです。

そして『ガチガチに固まった私の頭では感じることができない、子どもの豊かな発想に感心すると同時に、はっとさせられる。最近、怒ってばかりで自由な心を抑えつけていることが多いと反省している。ごめんね。』と結んでいます。

私たちも教材を選んだり、教えたりするとき、とかくこれまでの習慣や感覚で行動をとっていることがあるように思います。"絵本"はあくまでも子どものためのものであり、子どもが読んで楽しんでいるだけで満足していることがありませんか。しかし実際"絵本"は読んだり聞いたり、受け取る人によって異なる様々な内容が含まれているのです。そこに人それぞれの
楽しさや学びがあるのです。楽しく美しい絵本、温もりを感じる教材として使ってみませんか。

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