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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2012.5.13)


中嶋洋一先生 の講座を覗いて見る

 中嶋洋一先生には昨年1月、3月に引き続き、5月期のe-pros英語指導法研修会でもご指導を頂きました。全国各地から引っ張りだこの中嶋先生が、何ゆえe-prosで連続のご指導をしてくださったかというと、それには理由があります。

 1月の講座が熱心な聴講とともに中嶋先生の講座も大いに熱を帯び、近い日程でぜひもう一度、指導案改善をテーマに突っ込んだお話を聴きたいという声が圧倒的に高くなったものです。そこでその声をバックに、特別に3月までの時期にもう一度東京で講演をお願いしたいと話したものでした。先生もそのような聴講する方々の熱を感じて、それならば3月下旬、大学も一息ついたあたりでやりましょうという約束が出来たものでした。

 ところが着々と準備が進む中で、あの忌まわしい3月11日の東日本大震災が発生したのです。e-pros以外でもセミナーや研修会など各地で企画されていましたが、大震災とともにそのほとんどが中止となったものでした。「どうしようか」e-prosも大いに悩み、しかし中止の案内をすぐには出さず、参加の事前予約をした方々の反応を探ってみました。

 騒然とした中で、研修をやる時間があったら街頭に立ち、被害者支援の募金活動をやってはどうかなどという声も聞かれました。確かに駅頭や街の通りなどでは、そのような活動は始まっていました。しかし募金活動に立つのもそれなりの意味もあろうが、教壇に立って生徒に英語を指導するという自分たちの本分を退けての募金活動等はおかしいという声も寄せられました。

 いろいろな動きや様々な意見が寄せられたところで、中嶋先生にも相談してみました。しかし中嶋先生は毅然としていました。「今度の私の講座で勉強をしたいという人が一人でもいるならば私は東京へ行きます」というものでした。確かに中嶋先生の講座タイトルは、「バックワード・デザインによる『指導案改善』のすすめ」というもので、新学年の新学期を前にした3月の時期には、ぜひそのテーマのもとに勉強をしたいという声が多数寄せられていたのです。

 そこで、「たとえ一人でもやろう」という結論のもとに、中嶋先生に改めて上京をお願いし、たとえ一人の参加でも希望者がいる限りはそれに応えようという悲壮感漂う雰囲気で3月27日のフォーラムは開催されました。結局この日のフォーラムには27名の参加者が集まりました。

 参加者の仲には津波の被災地であり福島原発で揺れるいわき市からも、動かない電車をバスに乗り換えて参加した女性教師もいたのです。たまたま東京に出るということから近所の方々から、常備薬など緊急の買い物を依頼されるなど、まさに被災した姿そのままでのフォーラム参加は、他の参加者にも感動を与えたものでした。人にものを教えるとはかくも熱心でありたい、講座を最後まで受け、買い入れた大きな荷物を背負ってバスに乗り遅れまいと急ぐ姿に激励の拍手が沸いたものです。

 またこのような事態のなかでも参加して熱心に受講した参加者に敬意を示し、中嶋先生も会場の出口に立って、一人ひとりに優しく声をかけながら見送ってくださいました。
(e-pros代表 大釜 茂璋 おおかま しげあき)


バックワード・デザインによる「指導案改善」研修のすすめ
          ? 本気で、今の授業を変えたい人へ ?
 
            中嶋 洋一(関西外国語大学教授)

(「研修前に読んでください」とするプリントから抜粋」

 「いつも、尻切れトンボの授業になる。なかなか満足のいく授業ができない」という悩みを聞くことがある。実は、理由は簡単である。「目的(Whyなぜ、それを教えるのか。Whatどんな力をつけたいのか)がなく、単に「How(どう教えるか)」「Where(今日はどこまで進めばいいか)といった目の前の目標だけしか目がいっていないからである。「なぜ」がないということは、もし、指導者の「評価観」が狂っていたら、授業そのものが「勘違いされた指導」のまま行われてしまうことになる。

 例えば、「理解の能力」は「初出の英文を読んで(聞いて)概要を理解できる」ということなので、教科書を先に進める授業では、いつまで経っても「理解の能力」は身につかないし、実際にどこまで出来るようになったかは判別(評価)できない。授業の中でのトレーニングをしなければならない。

 教科書を先に進める授業(知識を教え込む、新しい言語材料を定着させるためだけの単発の活動)では、生徒たちは「学ぶ意味」を感じない。「やらされている」との感じは、ワクワクしない生徒たちの集中力が切れ、生徒指導が増えていくだけである。つまり、「できた!」「できるようになった!」という自信をつけるために、次のような技能獲得のためのトレーニング(活動)が、授業の中に日常的に入っているかどうかが指導案作りの要となる。
★聞く 
 Shadowing ( content shadowing, prosody shadowing、eye- shadowing )、
 Repeating Synchronized reading ( CDと同時読み) など

★読む 
 150/wpm の速読 ( build up reading ),One word echoing, Sight 
 Translationなど

☆書く 
 mind mapping(文章を発展させる構想)5W1Hを意識した発展のさせ方を指導教師の与える1文に対して、3分間英語で自分の意見を書く
 基本文の前後に1文付け足して文脈を作らせる など

☆話す 
 Semantic mapping (ペアでインタビューをする。質問をしながらmapping)
 基本文(日→英)、Q&A,3つのトピックから1つを選んでするpair chat
  (毎時間最初の5分で行う帯学習)、分かったことを伝えるレポートなど

 さらに、4技能の統合的な活用(技能をつなげる)を図るためには、生徒同士の意見や考えをつなげていくことが不可欠である。だとすると、個人で書かせた後、ペア学習やグループ学習でつなげていかなければならない。その時の教師の発問や支持は、どうあればいいのか。活動がつながっていくということは、学習者にとって「今、している活動に意味がある」「次の活動に必要である」「知りたい、伝えたいという願いを引き出す」ものになっていることが不可欠である。

 ゴール(つけたい力)と、それを可能にする活動をバランスよく取り入れながら、さらに教科書のコンテンツ(内容)でワクワクさせるための発問を考える。そこで、Backward Designの登場となる。今まで、パソコンに向かって頭から創っていた指導案を見直すことで、授業の改善点を見つけたい。

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