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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2011.2.9)

「障害児英語教育」の確立で(「教育新聞」平成10年5月10日号一部抜粋)
コミュニケーション力と豊かな心を
  小林 省三  東京都江戸川区立二之江小学校長

私には夢がある。それは人と人との良好な関係を構築していくコミュニケーション力をつけ、明るく積極的・意欲的な子どもを育てることである。特に、知的障害のある子どもにとっては、それは重要なことである。なぜならそうした力は生きる術にもなるからである。そのための実践方法として、英語活動が有力な方法の一つではないかと私は考え、ここに「障害児英語教育」として提唱する。

勤務校には特別支援学級(知的障害)があり、広汎性発達障害(自閉症、高機能自閉症)児、ダウン症児34人(平成22年度)が在籍している。

校長として着任したのは4年前、「ALTとの楽しいコミュニケーション体験活動を通して、不登校児、自閉症児が明るく、積極的・意欲的になっている知見を得た(渡邊寛治文京学院大学大学院教授)の論を支えとして、英語活動を取り入れた。

JTEをT1として毎週1回活動した。担任と私はT2として、すべて英語での活動を試みた。「母語もままならないのに、どうして英語なの?」と言う方もいた。

しかし心配は無用だった。平成19年7月からスタートしたが、1日目から子どもが変容した。彼らは異言語をしっかり聴き取ろうとし、JTEの口を注視していた。発音をまねして発生した。母語では言えなかった言葉が英語では言えた。

卒業式、ダウン症のA児はしっかりした母語でいままで歌えなかった(歌わなかった)校歌を胸を張って歌った。

平成20年のある日、子どもたちと地下鉄に乗ったところ、インドの方が乗車していた。B児(自閉症)は、私たちの手を振り払い、「ハロー、グッドモーニング」と言いながら握手をしようとしたのだ。インドの方も驚いたが、それ以上にわれわれも驚いた。B児には英語が通じると思ったこと(異文化理解)、英語を使ってみようとしたこと(積極的・意欲的な心)の芽生えが生じた。

e-pros事務局 注 こうして子どもたちは、江戸川区主催「おもいっきり表現してみよう!コンクール」で英語の絵本「ブラウンベア」の朗読をしたり、学芸会でも英語劇を演じたりした。小林校長は、こうした実践を学問としても捉えようと、渡邊寛治教授の下で学び昨年3月、『特別支援学級(知的障害児)における国際コミュニケーションの素地を育む外国語(英語)活動の研究  理論と実践』を完成している。(中略)

自閉症児、ダウン症児の6事例から、国際コミュニケーション(「共生」「自己決定行動」「主体性」)の素地ともなる、明るい心、積極的・意欲的な心がはぐくまれ、母語にも影響を及ぼすことを論文は結論としている。(後略)
     了

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