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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2011.4.2)

中嶋洋一先生を独り占め
                  大 釜 茂 璋


◆生徒にテスト問題を作らせる
 3月27日に開催されたe-prosフォーラムで、講師の中嶋洋一先生が取上げていた「生徒にテストを作らせてみよう」というケースはとても楽しい試みだった。これは「英語教育」(大修館書店、'06年10月号)でも触れられていて、スリルを感じながらもライバル意識に火をつける刺激的な学習法だ。

 これは学習者をその気にさせる教師の「授業のマネージメント」の中で紹介されている。中嶋先生は高校時代、演劇部に所属していたというが、ここでは登場人物の心理描写に格別の興味を持っていたという。進学先も心理学科にしようかとぎりぎりまで悩んだというから本物だ。結局は英語教育を専攻することになるが、大学に入ってからも心理学に関する本をよく読まれたという。

 先の研修会においても、教職についてからは尚更、授業には心理学的な手法が必要であることを痛感したとも話されていた。

 実際田尻先生でも北原先生でも、川村先生もそうだが、どの先生の講座を聴講しても、関っている生徒の一人ひとりを実によく観察し、細かなことまで知り、理解していることに気づく。考えてみればそれは生徒の生活環境や生活習慣、癖、日常の行動や友人関係などをつぶさに知ったうえでの心理的考察が働いている。当然その子の心理面を読んでの指導ということになる。

 ところで生徒にテストを作らせる話し。中嶋先生は「英語教育」に書いている。
 『例えば、定期テストの前に、各自で予想問題を作る。互いにライバル(ほぼ同じ力の生徒)を1人選んで、その生徒に問題を10台程度(30点満点)作る。もちろん、配点や観点も書く。そしてテスト用紙の左上には、「○○君(さん)への挑戦状』と書く。仲のいい友人に認めてもらいたい、あっと言わせたい、そんな思いがつまった問題がどんどん出てくる。

 問題の質は「単語や文の意味を問うような問題」はCレベル。レベルBは、並べ替え(6語以内)や和文英訳。条件作文や文脈から考えさせる問題はレベルA。
 問題は鉛筆で書く。作り終わったら互いに交換して問題を解く。答えはボールペンで書く。解き終わったら、ライバルの出題について感想を書く。その後交換して採点する。そして今度は、相手の出来具合にコメントを書く。

◆大切なテスト後のマネージメント
 このマネージメントが大切と中嶋先生は指摘する。テストを返して終わりではなく、振り返りの時間をとって、自分の問題と比較してみる。比較することで、様々な視点が見えてくる。理解していたことも整理できる。慣れてくると、入試などの出題の意図が読み取れるようになる。

 作成した問題は回収して、優れた問題は教科通信で紹介したり、一部を改題して実際のテストで使うこともあるという。生徒の作品(問題)が取上げられると、「よし、今度は自分のも」と、普段の学習に気合が入るという。

 27日の研修会でも先生は、生徒にテスト問題を作らせる学習効果を詳しく解説していた。よく理解していなければテスト問題はつくれないし、ましてライバルの出題に感想を述べたり出来具合にコメントを書くことはできない。これは理解度を見るためにも優れた方法であろう。「挑戦状」などと、巧みなユーモアとスリリングな刺激も含まれている。中嶋先生のアイデア溢れる指導技術がふんだんに披露されていたことに、「参加人数の少ない、中嶋先生を独占できた、まさに得した研修会」という感想が寄せられた。(おおかま しげあき 教育情報プロジェクト代表)

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