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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2010.1.22)

学校で補習学習と毎日の宿題 ― 秋田、福井 学力向上の秘密

大 釜 茂 璋
     (NPO法人教育情報プロジェクト代表・
      社団法人日本家庭生活研究協会常務理事)

 平成18年度から3年間、文部科学省が実施した全国学力・学習状況調査で、3年連続でトップクラスを維持した秋田県と福井県。学力向上の秘密はどこにあったのか。(社)日本家庭生活研究協会は1月9日、日本教育大学院大学と共催で「日本一の教育力を問う!秋田vs福井」と題するシンポジウムを、東京千代田区の日本教育大学院大学特別講義室を会場に開催しました。

 シンポジウムには、秋田、福井両県の教育長など教育関係者から、それぞれの施策や実態を報告頂き、それをベースに考え意見を述べ合うというものでした。

 学力・学習力状況調査の結果から見られるように、秋田県、福井県の小・中学生の学力が高い要因として、両県とも全県的に学習塾などの展開が少ないことから、学校での補習授業の充実や宿題に、格別に力を入れていることがあげられました。また生活面の指導においても「早寝早起き朝ごはん」励行の確率が高いなど、規律ある生活習慣、家庭や地域全体が学校や教師などへの信頼感が地域力となって教育力を高める要因になっていることが明らかにされました。

 全国学力・学習状況調査は小学校6年生、中学3年生を対象に、国語Aと国語B、算数(数学)Aと算数(数学)Bのテストを実施して、その実態を調査し、その結果を分析するなかで今後の教育に生かしていくことを目的に文科省が実施してきたもの。

 秋田県、福井県はそれぞれトップクラスの好成績をあげるとともに、全国体力・運動能力、運動習慣等調査でも学力同様トップクラスでした。

■秋田県の教育
 シンポジウムの第1部では、秋田大学教育文化学部教授阿部昇先生が「秋田県・学力トップクラスの秘密」、フリーライターの太田あやさんが「福井県の教育の秘密―ぶれない価値観と子どもとの距離感」と題する基調講演を行いました。

 秋田県の教育の実情に触れた『頭の良い子の生活習慣』(ソフトバンククリエイティブ刊)の著書である阿部教授は講演の中で、同県の学力トップクラスの要因として次の4点をあげました。

1)熱心で落ち着いている子どもたち
2)自らの考えを話したり書いたりする学習、話し合い、意見を交換しあう学習
3)補充的な学習と少人数学習・個別指導の実施
4)家庭での学習習慣の定着
 このいずれにおいても全国平均を上回っていると解説しました。

 その上で、全県の小学校をくまなく訪問したが、子どもたちは、どこの学校のどのクラスでも私語が少なく礼儀正しかったこと。また自分の意見をきちんと述べ、友達との意見交換も活発だった。放課後や、夏冬の長期休暇を利用した補習学習や家庭学習も徹底しておこなわれている、という報告がありました。

 秋田県内には学習塾などが少なく各地域では、"学力は学校の授業で"との考え方が徹底しているとともに、学力の底辺層も少なとのことでした。

 全国学力調査のB問題は知識の活用を問いますが、秋田県の子どもたちはB問題の無答率が低いのが特徴です。記述式ほどしっかり書く傾向があるといわれます。「とにかく挑戦してみよう」というこどもが多いと阿部教授は指摘していました。
 
 好成績を支える学習基盤として阿部教授は、
1.家庭・地域が学校を大事にする雰囲気がある。従って学校も地域共同体の意識が強い
2.家庭の中に、「早寝早起き朝ごはん」の生活習慣が定着している
3.県内には教員の優れた研修システムが整備されている
などをあげて、優れた成果を示す秋田県の教育について報告しました。

■福井県の教育
 一方『ネコの目で見守る子育て』(小学館刊)の著書で福井県の教育を紹介したフリーラーターの太田あやさんは、取材で足しげく通った福井県の教育の実情について、その一端を報告しました。

 住民や子どもたちへの取材を通して福井県の教育に触れると、まず何よりも「先生が熱心」というこえが突出していたということです。実際、住民から先生の悪口を聞くことがなかったというのです。一生懸命に子どもの教育に携わり、面倒を見てくれていると異句同音の答えが跳ね返ってくるのです。

 太田さんはこの実情を、「自己研修をベースに、集団で高め合おうとする研修体制が完成しているからではないだろうか」と指摘しました。

 福井県は「よく宿題を出し、それを基盤に家庭学習を確立している県」という点に特色があります。教育に関るフリーラターの大田さんは、福井県は『日本一宿題の多い県』という印象を受けたと語ります。

 『宿題をしなければ遊びはさせない』『宿題だけはかならずやらせる』という家庭が圧倒的に多かったと報告し、その要因は「県内に学習塾が少ないことから、必然的に学校にたいする信頼感が集中するからだろう」と分析しています。

 また秋田県同様、「礼の教育」が徹底していることも、学力向上の要因の一つになっていることは間違いないことも指摘しました。【資料:教育新聞、他より】 (つづく)

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