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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2010.1.23)

学校・地域・家庭の支える地域力
      ― 秋田vs福井 教育シンポジウムから

大 釜 茂 璋
      (NPO法人教育情報プロジェクト代表・
        社団法人日本家庭生活研究協会常務理事)

 (社)日本家庭生活研究協会と日本教育大学院大学共催によるシンポウジウム「日本一の教育力を問う!秋田vs福井」は、1月9日、東京・千代田区の日本教育大学院大学特別講義室で開催されました。

 このシンポジウムは、平成18年度から平成20年度までの三年間、文部科学省が全国小・中学生の学力を知るために実施した全国学力・学習状況調査で、3年連続でトップクラスを維持した秋田県と福井県の学力向上の秘密はどこにあったのか、その実態を分析し今後の参考にするために実施したものです。

 今回シンポジウムには、秋田県から根岸均教育長などの関係者、福井県からは広部正紘教育長ほかの教育関係者が出席され、それぞれの県の実情を報告しました。また部外者から見た両県の教育を、「秋田県・学力トップクラスの秘密」をまとめた秋田大学教育文化学部教授阿部昇先生が、「福井県の教育の秘密 ―ぶれない価値観と子どもとの距離感」としてルポされたフリーライターの太田あやさんが報告しました。 

 シンポジウムの第2部は、第1部の基調講演からの実態を取り入れながら、秋田県の根岸教育長と福井県の広部教育長がそれぞれの県の状況を説明しました。引き続き発表者4人が、横田日本教育大学院大学客員教授のコーデネートによるパネルディスカッションとともに、フロアとの間で質疑応答を行いました。

■福井県の実情報告
 福井県の広部教育長は報告の中で、同県教育の特徴として次の4点をあげました。
1)少人数教育の推進
2)文化勲章受章者で同県出身の白川静博士に学ぶ小学校の漢字学習
3)徹底した国語、算数の宿題の励行
4)優秀教員(教育専門監と呼ぶ)の学校派遣と他県との教員交流

 この中で少人数教育の推進については、「福井県独自の方法を取り入れ、子どもたちの可能性を最大限に伸ばすために、各学年の特性を踏まえた学級編制基準を導入している」と説明していました。

 例えば、小学校1,2年生は生活指導上のルール指導のために、平成23年度までに31人以上学級にし、非常勤講師を配置する。3,4年生は40人学級を維持し、5、6年生は20年度に36人学級にし、T・Tによる指導を導入する。

 中学校1年生は30人学級を維持、2,3年は23年度までに32人学級にして、生徒と直接向き合う時間を増やしているということです。

 このような仕組みの中で、家庭・地域と学校との連携はもとより、学校と大学との連携が強く、その上に立った教員の研修も充実しています。県の学力向上センターを創設し、県独自の学力・体力調査も実施しています。また白川博士の漢字学習も、国語教育の向上に大きく役立っているとのことでした。

■秋田県の実情報告
 秋田県の根岸教育長は主に、秋田県独自に取り入れている「ふるさと教育の推進」と「秋田わか杉っ子 学びの10か条」について説明をし、これらの実践が学力向上に大きく貢献していることを強調しました。

「ふるさと教育」とは、「人間としてよりよい生き方を求めて、昭和61年度から取り組んできた『こころの教育』の充実・発展を目指したもので、特に平成5年度からは学校教育共通の実践課題として推進してきたとして、この結果、「高校の中退率が極端に少なくなった」とその成果を報告していました。

「秋田わか杉っ子 学びの10か条」は、秋田県教育委員会が平成20年に制定し
たもので、その内容は次の10項目です。
1)早寝早起き朝ごはんに家庭学習
2)学校の話題で弾む一家団らん
3)読書で拓(ひら)く心の世界
4)話して書いて伝え合う国語
5)難問・難題にも挑戦する算数・数学
6)新発見の連続、広がる総合
7)決まり、ルールは守ってあたりまえ
8)いつも気をつけている言葉遣い
9)説明は筋道立てて伝わるように
10)学んだことは生活で学校ですぐ応用
この10項目は各学校の新たな"目指す子ども像"として活用されています。

 これに加えて根岸教育長は、福井県と同じで秋田県は学習塾がそれほど普及しているわけではなく、それだけに学校での補習学習や自学自習が充実していると話しています。また秋田大学の教員育成プログラムや秋田県教育センターの役割推進も、秋田県の子どもの学力向上に寄与していることを指摘しました。

■両県の今後の課題
 それぞれの県には課題もあり両教育長は、それに今後どう取り組み克服していくことが大事であるかを話していました。福井県の課題は「不登校の解消」であり、秋田県は「できる子を伸ばす教育」をあげていました。それらの解消に向けて今後両県が連携して努力していくことも確認し合ったシンポジウムでした。【資料:教育新聞,他より】 

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