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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2010.3.17)

新学期に生徒と教師の約束
                 大 釜 茂 璋

 新学期の授業が開始されても、なかなか軌道に乗らず時間が無駄に過ぎていくことに気づき、無性に焦ることがありますと、ある新人教師の嘆きを聞いたことがあります。特に大学を卒業し教師になりたての頃はそのような経験も乏しく、張り切る情熱だけが空回りをして、一つの指導項目でもあれもこれも教え込もうとすることから、生徒の頭は混乱し、あるいは容量オーバーとなって授業についていけなくなる生徒も出てきます。結局それが原因で授業崩壊につながることも珍しくありません。

 これは指導者が若く未熟なために、そのときの生徒の状況を冷静に観察し、自らの経験に重ね合わせながら生徒の心理状態まで気を廻す余裕がないことから発生するものと考えられます。

 阿部一英語総合研究所所長の阿部一先生はかつてe-prosフォーラムの講座で、教師と生徒との約束がきちんと出来ていない場合、往々にしてこのような混乱した授業が展開されると警告しています。そしてまたよく聞く話でもあります。

 教師と生徒の約束は、いわゆる両者の関係をきちんと整理し、安心して授業に臨む環境を作るために必要なことだと言います。それは4月の学年始めに両者で交わす契約のようなものだといいます。契約内容(約束)は決して難しいものでもないし、その内容をしっかり守っていくことで一年間続く授業がスムーズに進行できるというものです。

 即ち生徒の教師への約束は、「ベルが鳴ったら直ちに席に就き私語をしない」「授業開始前に教科書など授業で使うものはきちんと机の上に出しておく」「授業中は教師の言動に集中する」ということです。

 一方生徒に対する教師の約束は、「明るく大きな声で授業をする」「生徒のえこひいきはしない」「終了のベルが鳴ったらきちんと授業を止める(だらだら授業の延長はしない)ということでした。そして約束をしっかり守るための努力をするということをお互いに約束するのです。

 これは4月の新学期に交わすことがもっとも効果的です。お互いに約束を破るような状態に接したときは注意を促しながら、守るための努力を続けるのです。約束する内容は、学校の状態やクラスの雰囲気などによっていろいろ違ってはくるでしょうが、この時期にこそしっかり交わしたいものです。

 この3月期研修会で、「新学期に臨む若い教師たちへ」というテーマで研修をしてくださる阿部一先生は、先生の豊かな経験を踏まえ具体的なケースを交えながら、4月から教壇に立つ新任教師はもちろん、若い教師のための心得を指導してくださることになっています。どうぞこれから一年間にわたる教師生活を充実させ、豊かに過ごすための参考にして頂きたいと思います。
(おおかま しげあき NPO法人教育情報プロジェクト代表)

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