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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2010.8.17)

学力日本一! 秋田県教育の背景にあるもの
                 大 釜 茂 璋


 先に文部科学省が公表した本年度の全国学力テストによると、今回も秋田県、福井県がトップクラスの成績を収めている。今回はこれまでのように全員参加ではなく、約3割の学校に絞った、いわゆる抽出方式で実施されたが、結果から見る傾向はこれまでとほぼ同じものだった。

 特に秋田県の場合は、小学校6年生では国語A,国語B,算数A、算数Bのすべてにおいて全国1位、中学3年でも国語A,国語Bは全国1位、数学あ、数学Bは全国2位という結果を得ている。(中学の数学あ、数学Bの1位は福井県)。

 43年ぶりに全国学力テストを実施した2007年以降この両県は、連続でトップクラスの成績を上げている要因はどこにあるのだろうか。いろいろなところで多くの角度から分析が行われているが、これだという確定した要因を見つけ出すことは難しい。結局は色々な要因が重なった複合的な要素が強いというところが真相のようだ。

 秋田県の子ども達は、朝食を取る割合や、早寝早起きの割合の高いことが指摘されている。これは児童・生徒に規則正しい生活習慣が身についていることを示唆し、これは家庭や地域の良好な教育環境が保たれていることを示している。

 私が関係している社団法人家庭生活研究協会の立場から見ても、子ども達が落ち着いて勉強が出来る環境が整っていることが指摘できる。そういう環境があればこそ子ども達は他のいろいろな現象に目や心が奪われず、安心して勉強に集中できることが言える。そういう環境の中で育った子は、物事への対応が粘り強く出来ているという。

 その証拠に秋田県の児童生徒は学力テストにおいても、(1)無回答率が低い、(2)記述式の問題でも正答率が高い、(3)学力調査結果がよくなかった児童生徒の割合が相対的に少ないと指摘されている。

 家庭学習をしている時間は、小中学校とも全国平均を20~30分上回っている。家庭学習の様子を見ても、「計画を立てて勉強をしている」「学校の授業の復習をしている」「苦手な教科の復習をしている」「テストで間違えた問題を後で勉強している」といった項目がすべて全国平均を上回っている。

 学習環境の規範意識は思いやりの心でも、「学校のきまりを守っている」「人が困っているときは進んで助けている」「いじめはどんな理由があってもいけないと思う」「人の役に立つ人間になりたい」でも、全項目において全国平均を上回る。そして達成感や意欲の項目において、「物事を最後までやり遂げてうれしかったことがある」「難しいことでも、失敗を恐れないで挑戦している」「自分にはよいところがある」「将来の夢や目標を持っている」も全国平均を凌ぐ。人間が素直になれる環境ができていることが言える。

 学校のきまりや友だちとの約束をきちんと守るなど、規範意識が高い児童生徒の割合が多い。また人の気持ちが分かり、役に立ちたいという気持ちが強く、進んで困っている人を助けたりする思いやりの心も強い。

 これは各学校の生徒指導や児童・生徒会活動などの取組みの成果であり、家庭や地域での温かい関りによって、生きる力が育まれている表れと考えられる。

 この度秋田県の学力について田尻悟郎先生とメールで話し合う機会がありました。田尻先生も秋田県の学力は、「家庭の安定が大きな要因になっている。三世代の同居、大人に対する敬意、離婚率の低さが子どもたちの精神的な安定につながって効果をあげている」と鋭く分析していました。

(おおかましげあき NPO法人教育情報プロジェクト代表)

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