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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2010.10.10)


◆わたなべ りゃうじらうのメルマガ

『頂門の一針』より
 『頂門の一針』は元NHK政治部記者・外務大臣秘書官を経歴に持つ渡部亮次郎氏が毎日発信しているメールマガジンです。国内外の様々な現象を捉え、いろいろな立場の人が鋭く論評することで注目を集めています。時にはわが国の英語教育海外との比較など、熱い論争を繰り広げられることもあります。論争内容の賛否は人それぞれですが、国際化の進展する中で、英語に対する人々の考え方が披瀝されていて参考になります。発行者の了解を得て転載します。

TOEICへの重点指向への疑問
  前田 正晶


 3日の夜、あちこちチャンネルを変えていました。すると英語関連のいくつかの番組にぶつかりました。

 NHKのBSだったでしょうか、女性アナウンサーの道伝さん(だったか)の 上手いけれども固めの英語の司会で、アジア諸国を代表する方々から、中国、インドネシア、マレーシア?の方が語っていました。

 我が国からは慶応義塾塾長・清家篤氏でした。清家氏の難しい言葉を沢山使った見事な英語で意見を表明しておられたのが印象的でしたが、一寸"you know"が多いかなという気がしました。

 アジアの代表は皆難しい言葉をご存知で講演調で語られ英語力の高さを見せていましたが、やや"you know"が多いのも興味深い現象。とは言え、我が国の政治家もこういう場で自 在に英語を操って討論して貰いたいものと感じました。

 思い出したのが、1997年7月にジャカルタからの帰り、空港内のガルーダのラウンジで語り合ったインドネシアの通産省局長と名乗った人物は、見事なアメリカ英語の使い手でした。

 そうでした、あの国の一定以上の階層は英語が上手いのです。この点は(「頂門の一針」前号で触れていた)宮川氏の意見と似ています。矢張り一国を代表する機会がある方には、英語力は必要だということを示しています。

 次が竹中平蔵氏。勝間という近頃人気が高い経済専門家の女性との対談で、我が国から脱出した企業が急速に増え、1年間で売上にして35兆円、9万人(と言ったと記憶)の雇用を失ったと指摘しました。これでは海外に進出する製造業では英語力が必要になるのは当然でしょうか。

 次がBS-TBSの「サンデー・スコープ」で、社内の公用語を英語にする企業が増加傾向にあると特集。実際に英語での会議の場面を見せました。かなり偉そうな方が実に難しい(としか言いようがありません)言葉を多用して、立派な意見を日本式発音で発表しました。これは漢字を使う熟語と同じような考え方で、英語の熟語(phrase)を探して覚えて使う傾向があることを示しています。

 私は企業内で社員の英語力を高めるのは良いことですから否定はしません。だが、社内の公用語化に備えて英会話学校に通う人数が増えてきたとも伝え、Berlitzの人にそう言わせました。

 ここで番組が言いたかったことは「その傾向の下にTOEICを受験させる会社が増え、社員が700点を取れないと駄目という基準を設けた会社もあり、国際化の時代にあって益々英語力の重要性が・・・」だったようです。

 そこで興味を感じたことは、何というキャスターか忘れましたが「海外特派員を経験した際に、英語が出来なくて思うような取材が出来なかった」と悔やんで見せた点。私に言わせれば「それは貴方だけの責任ではない」のですが。話せないようにしかできない学校教育にも問題があるのですから。

 以上、全てが「英語が出来ることが益々重要になる」と「必要がない部署まで徹底する必要ありや」と「いや時代の流れには逆らえない」でした。最早この流れは止めようがないかと思います。

 しかし、以前にもNYでファンドを運営する堀古英司氏が指摘したように、「英語力を重視すると日本人、それも新卒の就職の門戸が狭まる」傾向も生じるでしょう。決して歓迎出来ないのでは。

最後に私の意見です。「TOEIC対策の強化は本末転倒というか順序が反対。我が国の英語教育で習い覚えた英語が外国で通じなかったからと言って、一気にTOEICに行くのではなく、最初から基本からやり直して学校教育の英語から離脱することと英語圏の人たちの思考回路や文化の違いを認識するべきである」です。

 だが、換言すれば「基礎からやり直すのが本道で、いきなりTOEIC対策に走るのでは考え方に飛躍があります」となります。

 更に、何度も言ったことですが、日本人同士で日本式発想と日本式思考体系で語り合えば意志は通じるでしょうが、外国人が相手となった場合は意思の疎通は容易ではありません。言うなれば"It's a different ball game."と なる冷厳な事実です。

 しかも、「日本式発音に慣れた耳には、リズム感があるアメリカ式発音についていくのは大変ですし、UK式の抑揚があるようでない語り方は私は苦手です」と申し添えます。

 ここに私が主張する「これまで学校教育で習い覚えた英語の初期化と、新ソフトとハードのダウンロードの必要性、即教育改革の必要性」です。11月13日の最大のポイントはここでしょうか。(前田 正晶)

前田正晶様のご指摘を頷きつつ拝読
う に(ハンドルネーム)

 企業のTOEICの利用が、ニュースで大体消極的な肯定の口調で語られるのは、つまり大方の人があまり確たる自信もなく、事態を眺めているということなのでしょう。

 TOEICで一定以上の得点を要求する企業、社内言語を英語に限定する企業と様々ですが、その先駆けの一つとなったある企業の社長の英語による記者会見を見ていて、「おやおや」か「やはり」という印象を受けました。

 その会場にいたのはすべて日本人のようでしたが、その中の一人の女性記者が、日本人同士が、母語の日本語ではなく英語を介してコミュニケーションを取った場合、細かいニュアンスなど通じなくなり不便ではないか、というようなことを質問しました。

 その女性記者は日本語で質問し、社長は同時通訳装置を付けていたように記憶しています。驚いたのは社長の答えです。英語で、「自分はそのようなことについては自信を持っている」と返したのです。

 私は、これじゃ、英語によるコミュニケーションになっていないじゃないかと、笑ってしまいました。言語はそこそこ英語でも、コミュニケーションのやり方は、典型的な対話下手の日本人のものです。

 自分が自信を持っているなどということはどうでもいいことです。自信を言うなら、なぜ自信が持てるのかをまず説明すべきなのです。こんな猿真似の英会話じゃ、世界ではやっていけないよ、と思いました。

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