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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2010.11.28)

全国学力調査において好成績をあげる秋田県の要因
          大釜 茂璋(NPO法人教育情報プロジェクト代表)           
 文部科学省が平成18年度から実施している全国学力調査は、小学校では秋田県が、中学校では福井県が毎年トップクラスの好成績をあげ注目されています。
 (社)日本家庭生活研究協会では日本教育大学院大学と協力して今年9月、「秋田に学べ!日本一の教育力」と題するシンポジウムを開催しました。これには秋田県の教育改善に深い関りを持つ秋田大学教授・同大学教育文化学部附属小学校長の阿部昇教授の講演と、教育関係者によるパネルディスカッションがありました。

 阿部教授は、秋田県が学力調査で好成績を収めている要因として、同調査の「児童・生徒質問紙」「学校質問紙」のデータを引用しながら、7つの項目をあげて説明しました。

 「熱心で落ち着いて学習する子どもたち」の姿が明らかにされ、「私語が少なく落ち着いている」「礼儀正しい」が、全国平均よりも2割がた高いことがわかりました。

 阿部教授は県内の殆んどの学校を訪問していますが、「子どもたちの姿勢は授業に前向きに参加し、授業が成立しないような学校はない。当たり前のことが当たり前に行われている」と指摘していました。

 また各学校とも「補充的な学習、少人数学習、個別指導」に力を入れ、「放課後を利用した補充的学習(週4回~月数回)」「長期休業を利用した補充的学習(5日以上)」が、全国平均よりも1割程度高いのも特色でした。

 「家庭での学習習慣の定着」も、他県では見られない項目でした。特に「家で学校の復習」『家で苦手な教科の勉強』が、全国よりも2割から3割強も上回っています。「秋田県には、家庭や地域が学校をサポートする雰囲気がある。学習塾が少ないことも要因なのかもしれない」と分析しています。

 また「優れた研修システム」が整備されていることも、教師の学習意欲を守り立てる動機となっていて、それも学力向上の要因と見られています。県や地域による算数・数学や国語の推進事業、教育専門監の配置のほか、各種授業研究会も活発です。

「実質的な研修システムが機能している。教育専門監の配置は全国初のもので、授業アドバイザー(現在40人)の役割で巡回指導をしている」と阿部教授は報告しています。

 また家庭・地域と学校の連携がよく図られ、家庭学習の充実を図るものとして「家庭学習ノート」の効果もこの県独特のものです。大学ノートを使って、家に帰ってからの勉強はすべてこのノート1冊に書き残すという学習法は、これで力をつけるというよりは、家庭学習の習慣を身につけるうえで大きな効果を発揮していると言われます。他に秋田県の特徴は、お祭りなど「地域行事に参加」も全国平均よりも高くなっていて、これは地域や親子、家庭と学校との関係を円滑にし、子ども達が安心して学習に精進できる雰囲気を作り出しています。

 最後に阿部教授は「秋田県の課題」として、(1)県内・地域間の学力格差の解消(教員の増員、多忙化の解消など)、(2)30人学級の全学年への拡大、(3)「活用」型学力の充実などをあげました。
(資料:阿部教授の配布資料、『教育新聞』、その他)

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