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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2010.12.15-2)

 この12月23日にe-pros英語指導法研修会で講師を務めてくださいます関西大学教授田尻悟郎先生の著書「(英語)授業改革論」(教育出版)に、『家庭学習を促す授業の条件』があります。家庭学習を充実させるために教師は授業において何をするか。これがベストという方法はないでしょうが、ここでは長勝彦先生の活動を田尻悟郎先生が紹介しているのですから、大いに参考にしたいと思う人は多いと思います。

☆『皆さんは、Last Sentence Dictation』という活動をご存じだろうか。私は1998年に、東京の両国中学校にご勤務なさっていた、長勝彦先生にこの活動を教わった。

 長先生は前年度の教科書を使い、先生の読みあげた文章の最後の1文(the last sentence you've heard)を書くという書き取りテストを行っておられた。

 たとえば、中学3年生ならば中学3年の教科書を、2年生ならば1年の教科書を使って、教科書の本文を読み、途中の適当なところでランダムに終える。それを生徒が書き取るのだが、どれが最後の1文になるかは分からないから、生徒は非常に集中して聞く。

 これはとても地味な活動で、中3の3学期の最後アンケートで尋ねた「楽しかった活動」では、最も評価が低かった。 しかし、「力がついた活動」では、堂々3位にランクインした。それぞれの活動に関する自由記述では、以下のような言葉が並んでいた。

「どの文も最後の1文になり得るので、集中力がつく」
「リスニングの力が伸びた」
「前の学年の教科書を見直せるので、受験の準備になった」
「田尻先生は、だいたい一番長くて難しい文を選ぶので予測できたが、それでも長い文はなかなか覚えられなかったので、意味のかたまりに分けて覚え、英語の語順通りに復活した。だから、文法が強くなった。ただ時々1文目読んでいきなり止まるので、そりゃないだろ!と思ったが・・。先生、性格悪すぎ」

 後輩へアドバイスという欄では、次のような言葉があった。
「ディクテーションは地味で面白くないけど、力がつくから絶対に頑張って欲しい」
 確かに楽しいにこしたことはないが、最終的に生徒は、力がつく活動を支持する。

 私は英語の歌も授業でよく使ったが、卒業間際のアンケートでは、歌詞の意味の深いもにが上位を独占した。生徒は知的な活動を好む。Funだけでなく、interestingでintellectualな活動を豊富に行いたい。

 (こうしてballpoint pen, maker, ruler, dictionary, telephoneなどのアイテムを英語で説明させる活動を、中1、中2、中3と内容を発展させていく)

 この活動は生徒にとても人気があった。(中略)ある時、この活動が終わった後で生徒がこう言った、「先生、これ、あらかじめノートにヒントを書いてきていいですか」 もちろんですとも。願ったりかなったりじゃないですか。翌朝、職員室前に置いていた自学ボックスから自学帳を取り出し、チェックし始めて驚いた。何人もの生徒が、これらのアイテムを英語で説明していたのである。

 その後先生が、何でこんなに燃えたのかと彼らに尋ねると、
 「だって、力がつく活動だもん」という生徒、やり方が分かったから家で続きをやろうと思った、中1からやってきて、自分のレベルの上がるのが分かる、といった答えが返ってきたという。

 これらの体験から田尻先生は、生徒が家庭学習を自主的に行う条件は次の4つと指摘しています。
(1)力がつく活動・学習だと認める
(2)やり方が分かる
(3)面白い
(4)上達が感じられる

 ならば、それをこちらが意図的に仕組めばよいのだ。生徒の声は本当に貴重な情報をもたらしてくれると書いています。

 秋田県のケースでも、宿題は比較的少ないといわれます。その代わり家庭学習をしたくなるようなヒントを与えたり、家庭学習までのルートを示したりしながら教師が誘導するところに効果が出ているということです。授業時間だけでは全部終えることが出来なかったからなどという理由で宿題に替えると、生徒は何のための宿題か、何で家に帰ってから勉強をしなければならないか疑問視することになります。

これでは家庭学習の効果はあがりません。
先生だったら、家庭学習に誘導する方策をどのように考えていますか。 (参考資料:田尻悟郎著「(英語)授業改革論・教育出版 ¥1,800」

 e-pros会員から12月23日開催のフォーラムへの参加申込みとともに、次のようなコメントが寄せられましたのでご紹介します。

 「12月期開催のe‐prosフォーラムの講師の先生を見てびっくりしたり、またとても嬉しく思いました。田尻悟郎先生と久保野りえ先生の講座を一気に聴講できるなんて、私は目を疑ったほど。田尻先生の講座は2度ほど聴講しましたが、その迫力と生徒への愛情には涙がでるほど感動しました。何回聴いても常に新鮮で得るところが多く、私は何回でも聴きたいと思います。毎年12月のフォーラムで田尻先生の講座をセットしてくださるe-prosにも、心から感謝いたします。

 また久保野りえ先生の講座は、e-prosフォーラムで聴講しました。東京国際フォーラムで開催したときですが、優しい雰囲気で、聴講者が気づかぬ間に引き込まれてしまう指導法はとても真似のできないものでした。お二人ともパーマー賞を受賞されていることも圧巻です。12月23日の研修会が待ち遠しい思いです」

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