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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2009.4.14)

新しい英語指導 ― 学校や学年のバリアを外そう
                  大 釜 茂 璋


  昨年3月に公示された小中学校の新しい学習指導要領は、小学校が平成23年度、中学校が平成24年度から全面実施されることはご承知の通り。

 実施される学習指導要領は問題視されて来たゆとり教育が一部見直され、指導分野や指導時間の増加などが顕著に窺がえる。特に英語教育の今後は、これまでのように「中学校での英語」、「高校の英語」といったバリアを取り崩し、小学校から大学までの一貫した英語教育が志向され、今後はその指導法への取り組みが重視される。

 e-pros事務局にも埼玉県の高校教師から、高校の英語教育の現状を踏まえて、疑問と今後の課題が寄せられている。  この教師の勤務する埼玉県東部地区にある高校は、いわゆる全日制普通科の底辺高校で、教師も生徒も、それなりの苦労を重ねながら英語に取り組んでいるのが実態である。中学校段階では、“英語で教える”では無理で、そこでは“英語を教える”英語指導でなければ、生徒は最終的に英語の評価が得られないのが現実と教師は指摘する。

 実際この高校には、中学校時代、学習塾にも通えなかった(通わなかった)生徒も多く進学してくることから、生徒達の英語レベルは極端に低いと嘆く。せめて中学校では、中学校レベルの文法を反復定着させておいてほしいと。
 今年度の埼玉県高校入試の英語では、思いのほかリスニングの量(視聴時間)が多く、また英作文では、伝えたい趣旨に対して、その文法的誤りに配慮して採点するように指示されたことから、高い水準の受験生に支点を置いて作問されたことが窺がえたという。

 高校入試問題レベルの生徒は英語学習に対する意識がしっかりしているので、高校で改めて文法の学習を整理し積み重ねていくことで、総合的な英語力を積極的に自らの自己表現手段とするモチヴェーションを維持していくことは可能だろうが、指摘する教師の勤務校レベルの生徒となると、なかなかそうはいかないのだ。

 原因として考えられることは、中学校の指導において、文法の正確さの後回しのためか、正しい英語表現に対する意識が高まってこない。『だいたいこんな感じで・・』といった程度の意識で、4技能どれをとっても、その臨む姿勢は変わらないのが事実。最近では主語を把握する意識さえ希薄であると嘆いている。
 
 ここまで指摘して、しっかりした英語教育を提供に必要なことは、しっかりした日本語学習ではないかという。そしてそれは、鑑賞力ではなく表現力ではないかと。節操なく内容の薄いコミュニケーションでいい気分になるよりも、口数こそ少なくても、いざと言うときに簡単でも明瞭に、きちんとしっかり自己主張できる能力を、日本語においてもまた外国語においてもつけさせてやりたい。

 たしかに英語によるコミュニケーションの育成重視に舵を切られたことで、読解力や文法を軽視する風潮が生じていた。文法などはどうでも、お互いの意思が通じることが大事という人に接することもあった。しかしそこにはコミュニケーションに対する誤解があった 。

 インターネットに代表されるようにITの発達、普及は盛んである。メールのよる意思の疎通、書くことによる国際交流は、今後の必須事項となることは間違いない。その場合、読解力に不足し、文法がでたらめでは知性や教養に赤信号が灯る。まともに相手にされなくなると指摘する人も多い。心して耳を傾ける事項ではある。


 小学校から中学校、そして高校、大学へと、今や英語教育は一貫した流れが要求されている。その指導にはどう取り組むか。指導法、教材をどうするか。教える教師の意識は・・。

 今回4月期フォーラムでは、これらの英語教育の新しいあり方、指導法などを盛り込んだ講座を、北原延晃先生、久保野雅史先生にお願いした。小学校英語のWSだから小学校の教師が聴講する、中学校英語だから高校教育には関係ないといった観念は払拭する必要がある。わが国の英語教育を立て直し、実際に活用し尊敬される英語力を身につけるためにはこのようなバリアの撤去こそが大切である。4月フォーラムには、学校や学年に関わりなく、多くの方々の参加が期待される。
(おおかま しげあき NPO法人 教育情報プロジェクト代表)

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