もっと身近に誰にでも!

フォーラムレポート

一覧へ戻る

英語教育東京フォーラム(2009.7.6)

金谷憲先生編著「教科書だけで大学入試は突破できる」(大修館書店刊)から

                   大 釜 茂 璋

 先日の『e-pros通信』で金谷憲先生編著「教科書だけで大学入試は突破できる」(大修館書店)についてご紹介しましたが、多くの方から反響がありました。やはり大学入試は受験生だけでなく、それを指導する教師たちにも大きなプレッシャーになっているからでしょう。
 しかしそうかといって、入試指導を避けて通るわけにはいきません。この本の中で金谷先生も触れていますが、現在の日本で「入試やその他のテストが英語学習の大きな動機づけ要因になっていることも自然の成り行き」であることも事実です。

 私も英検在籍当時、英検に合格したから英語の力があるのではなく、英検合格を一つの目標に置いて英語を勉強することで英語力がつくのだと話したものです。英検合格は結果的なもので、英語学習の動機づけとして英検を活用してもらいたいと常に思っていました。それは入試勉強でも同じことが言えるのです。
 ところが金谷先生も指摘しているように、目の前にぶら下がっている大学入試だけに、入試に役立たないことは授業で出来ないという心理的プレッシャーに英語の先生はさらされているというのです。しかしそのための対策は十分にとられているか。まさに「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」が当てはまるのです。  その喩えに添うならば、受験対策として英語教育を考えると、常識的に次ぎの3種類の情報を得る必要があるというのです 。

(1)入試問題は、実際どのようになっているか。(敵を知る)
(2)高校での授業は、生徒にどのようなことを教えているのか。(己を知る)
(3)高校生は、そのうちどの程度を理解し、定着させているのか。(己を知る)

 これら3種類の情報をつきあわせることによって、今後どのような授業を展開して行けばよいのかを決めることが出来ると言っています。この場合細かく言えば、傾向を探るには大学入試全般の傾向というよりも、自分の勤務する学校の生徒が多く受験する大学の傾向に絞ったほうがよいと言っています。

 まさに傾向と対策は、受ける大学のそれを探ることであって、総括的な傾向を知るだけでは、焦点のぼけた内容になってしまいます。入試問題を作る大学側にしても、「高校ではどのような分量の、どのような種類の英語を生徒たちに与えているのか、ということもわからなければならない」ところだが、これが意外とわかっていないというのです。
 教師が教えた分、生徒がそっくりそのまま頭に入れて、定着させるということはまずあり得ない。教師が10教えても、生徒の多くは4や5しか学ばないというのです。しかしその一方で教師が10教えたのに、一部の生徒は15学んでしまっていることも起こりうる。

 本の中ではこのような高校や大学の現状を見ながら、多くの大学の入試問題を分析し、いろいろと指導上のヒントを提供しています。それをどう消化して合理的な勤務する学校の生徒に受験対策を講じることが出来るか。e-prosなどが主催するフォーラムなどで、有名講師たちが多くの角度から分析し考案した指導法の紹介を受講しながら、自らの指導技術を作り上げていくかということも同じだと気づきます。
 この本の中では一例をあげて、次ぎのようなことも指摘しています。
 「大学入試が仮に、生徒に対して、多くの語彙を学ぶことを要求していたとして、教師が焦ってそのすべてを生徒に与えても、生徒がそれを受け取らないのでは意味がない」「教科書の語彙だけでは不十分だとして、単語集などを買わせて小テストを繰り返したとしても、教科書の語彙も定着していない場合、虻蜂取らずに終わってしまう可能性がある」
 単語集の語彙も教科書の語彙も身につかない。これでは折角の指導であっても、学習効率はきわめて悪い、としています。e-pros英語指導法7月期フォーラムは、まさに効率的な指導法を具体的に伝授する、夏休みのこの時期だからできる研修会です。どうぞ奮ってご参加ください。
(おおかま しげあき NPO法人教育情報プロジェクト代表)

一覧へ戻る


top