英語教育東京フォーラム(2007.10.16)
新しい指導法の発見を!
大 釜 茂 璋
(NPO法人教育情報プロジェクト代表)
「中学生になって嬉しいことは?」と新入生たちに質問を投げかけると、ほとんどの中学生から「英語の勉強が楽しみ」と、元気な答えが返ってきます。大きくなったら外国へ行って、その国の人々と英語で話してみたい。外国人と仲良くなるためには英語のマスターが大事と、海の向こうの国々に向けた期待が、大きく膨らんでいることがわかります。
それが、夏休みが過ぎ、秋の爽やかな季節を通り越してクリスマス、お正月を迎える頃ともなると、子どもたちの間に英語嫌いが芽生え、学習に熱が入らず、あれほどまでに英語の学習に関心を持ち、楽しみにしていた期待感が、急速に萎えてしまっていることに気づくことがありませんか。
野球でもサッカーでも、大好きだったスポーツが急に嫌いになるという経験をした人も少なくないでしょう。夢中になって、暗くなるまで球を追いかけていた子が、それまでの熱に冷めて見向きもしなくなるときは、それ相応の理由があるのです。練習が厳しすぎるとか、ライバルに負けたとか、あるいは自分のミスで大事な試合に負けたとか、いろいろな原因が考えられるものです。
このようなケースを、英語指導の中でも見かけることはありませんか。英語の場合は、日ごろの学習からネイティブ風に読んで友達に冷やかされたとか、点数にこだわりすぎてテストの得点が伸び悩んでいるとか、受験を意識しすぎた指導のために英語の楽しさを見出せぬままに過ごしているとか。毎日決められた単語数の暗記が宿題となり、それが辛くて英語嫌いになった中学生もいました。もしこのような場に直面したら、どんな指導をしますか。どなたか相談する人はいますか。
スポーツならば知識と経験の豊富なコーチや監督が適切なアドバイスをして、励ましたりフォームを矯正したり指導を加えます。それで立ち直る生徒も多いのです。英語の場合はどうでしょうか。やはり英語の場合も嫌いになった原因を探り出し、それを解消させることが必要なのです。そのための知識と経験となれば、英語の教師として常日頃から勉強をし、経験を積み重ねることが大切といえるでしょう。英語の指導法は常に新しく研究され開拓されています。研修会などもいろいろな形で数多く開催されています。だからといって、あの講師の話は前に聴いたことがあるからと、一回聴講しただけで全てを理解したような錯覚に捉われている人に出くわすことがあります。しかしそのような姿勢には些か疑問が残ります。
たとえ以前、同じテーマや内容の講座に参加していたとしても、聴講する人の環境は時間の経過とともに変化してきているはずだし、それだけに前とは違った、自分の指導法を新しく発見することもできるのです。一度読んだ本を何回読み返しても、常に新しい感動や発見があることと同じです。そのような意味からも、研修会やフォーラムへの参加はできるだけ回数を重ねることが大切です。それが教師としての本当の実力につながっていくのです。
◆英語らしい日本語
島岡 丘先生の「英語が使える日本人のための発音指導」から
10月21日開催のe-pros英語研修会で、「楽しく覚えさせる語彙指導-もう一つの工夫」のタイトルで講師をお願いしました島岡 丘先生(聖徳大学教授、筑波大学名誉教授)は、発音、発声記号などを含む語彙指導の権威として知られます。文部科学省の科研費プロジェクト研究「英語が使える日本人のための発音指導」の中で、「英語らしい日本語」として興味深い研究を発表しています。
その研究の中で、日本語の発音の中にはきわめて英語に近い発音があることを指摘しています。このような指導法を組み入れながら語彙指導をすると、英語も案外身近な言語に感じて興味を抱く人も多くなるのではないかと思います。またユーモアも感じます。その一部を抜粋してご紹介します。
○「ウ」を活用し、英語の曖昧音を出す
1.風呂 Hello 波浪(警報)より風呂のほうが英語に近い
○母音+ンで長母音化を表す
2.安眠妨害 I mean,poor guy. 「ン」は母音の長音に聞こえることが多い
3.あ 醤油あいかん I'll show you ICON. Iは[a]だけが残る
○eat(VC)をea(t)(V)にする
4.すごい! (Let')s go eat. 速く言うとlet'sはsになることが多い
5.〈罪の〉あがな贖い I'm gonna eat. gはmの前で[_]、語末のtは脱落しやすい
○ndはnだけにする
6.言わない You an' I 弱形のandはdが落ちることが多い
7.若干便利 Jack and Betty.
○母音の後のlを「ヲ」で表す
8.宮尾清美 meow, kill me 母音の後のlはウまたはオに近い
○ofは後続音のtの影響で脱落する
9.河童亭 (a)cup of tea ofはtの前で脱落。Kappaはその表記
○canは文中では弱くする
12.アー君、好き! I can ski.. canは母音が脱落し、knのようになる
○NHK番組「英語でしゃべらナイト」で取り上げたロンドンで通じた例
13.揚げ豆腐 I get off. Iは長母音。Get)offはつながる
14.掘った芋いじるな! What time is it now?
15. 齋藤寝具 sightseeing
16. 家内屁をプー! Can I help you?
○その他
18.ハイヤー、どう? How're you doin'? doingはdoinになる
19.ハマチ How much? 寿司屋での話し
20.アンコウ uncle あんこう鍋
大 釜 茂 璋
(NPO法人教育情報プロジェクト代表)
「中学生になって嬉しいことは?」と新入生たちに質問を投げかけると、ほとんどの中学生から「英語の勉強が楽しみ」と、元気な答えが返ってきます。大きくなったら外国へ行って、その国の人々と英語で話してみたい。外国人と仲良くなるためには英語のマスターが大事と、海の向こうの国々に向けた期待が、大きく膨らんでいることがわかります。
それが、夏休みが過ぎ、秋の爽やかな季節を通り越してクリスマス、お正月を迎える頃ともなると、子どもたちの間に英語嫌いが芽生え、学習に熱が入らず、あれほどまでに英語の学習に関心を持ち、楽しみにしていた期待感が、急速に萎えてしまっていることに気づくことがありませんか。
野球でもサッカーでも、大好きだったスポーツが急に嫌いになるという経験をした人も少なくないでしょう。夢中になって、暗くなるまで球を追いかけていた子が、それまでの熱に冷めて見向きもしなくなるときは、それ相応の理由があるのです。練習が厳しすぎるとか、ライバルに負けたとか、あるいは自分のミスで大事な試合に負けたとか、いろいろな原因が考えられるものです。
このようなケースを、英語指導の中でも見かけることはありませんか。英語の場合は、日ごろの学習からネイティブ風に読んで友達に冷やかされたとか、点数にこだわりすぎてテストの得点が伸び悩んでいるとか、受験を意識しすぎた指導のために英語の楽しさを見出せぬままに過ごしているとか。毎日決められた単語数の暗記が宿題となり、それが辛くて英語嫌いになった中学生もいました。もしこのような場に直面したら、どんな指導をしますか。どなたか相談する人はいますか。
スポーツならば知識と経験の豊富なコーチや監督が適切なアドバイスをして、励ましたりフォームを矯正したり指導を加えます。それで立ち直る生徒も多いのです。英語の場合はどうでしょうか。やはり英語の場合も嫌いになった原因を探り出し、それを解消させることが必要なのです。そのための知識と経験となれば、英語の教師として常日頃から勉強をし、経験を積み重ねることが大切といえるでしょう。英語の指導法は常に新しく研究され開拓されています。研修会などもいろいろな形で数多く開催されています。だからといって、あの講師の話は前に聴いたことがあるからと、一回聴講しただけで全てを理解したような錯覚に捉われている人に出くわすことがあります。しかしそのような姿勢には些か疑問が残ります。
たとえ以前、同じテーマや内容の講座に参加していたとしても、聴講する人の環境は時間の経過とともに変化してきているはずだし、それだけに前とは違った、自分の指導法を新しく発見することもできるのです。一度読んだ本を何回読み返しても、常に新しい感動や発見があることと同じです。そのような意味からも、研修会やフォーラムへの参加はできるだけ回数を重ねることが大切です。それが教師としての本当の実力につながっていくのです。
◆英語らしい日本語
島岡 丘先生の「英語が使える日本人のための発音指導」から
10月21日開催のe-pros英語研修会で、「楽しく覚えさせる語彙指導-もう一つの工夫」のタイトルで講師をお願いしました島岡 丘先生(聖徳大学教授、筑波大学名誉教授)は、発音、発声記号などを含む語彙指導の権威として知られます。文部科学省の科研費プロジェクト研究「英語が使える日本人のための発音指導」の中で、「英語らしい日本語」として興味深い研究を発表しています。
その研究の中で、日本語の発音の中にはきわめて英語に近い発音があることを指摘しています。このような指導法を組み入れながら語彙指導をすると、英語も案外身近な言語に感じて興味を抱く人も多くなるのではないかと思います。またユーモアも感じます。その一部を抜粋してご紹介します。
○「ウ」を活用し、英語の曖昧音を出す
1.風呂 Hello 波浪(警報)より風呂のほうが英語に近い
○母音+ンで長母音化を表す
2.安眠妨害 I mean,poor guy. 「ン」は母音の長音に聞こえることが多い
3.あ 醤油あいかん I'll show you ICON. Iは[a]だけが残る
○eat(VC)をea(t)(V)にする
4.すごい! (Let')s go eat. 速く言うとlet'sはsになることが多い
5.〈罪の〉あがな贖い I'm gonna eat. gはmの前で[_]、語末のtは脱落しやすい
○ndはnだけにする
6.言わない You an' I 弱形のandはdが落ちることが多い
7.若干便利 Jack and Betty.
○母音の後のlを「ヲ」で表す
8.宮尾清美 meow, kill me 母音の後のlはウまたはオに近い
○ofは後続音のtの影響で脱落する
9.河童亭 (a)cup of tea ofはtの前で脱落。Kappaはその表記
○canは文中では弱くする
12.アー君、好き! I can ski.. canは母音が脱落し、knのようになる
○NHK番組「英語でしゃべらナイト」で取り上げたロンドンで通じた例
13.揚げ豆腐 I get off. Iは長母音。Get)offはつながる
14.掘った芋いじるな! What time is it now?
15. 齋藤寝具 sightseeing
16. 家内屁をプー! Can I help you?
○その他
18.ハイヤー、どう? How're you doin'? doingはdoinになる
19.ハマチ How much? 寿司屋での話し
20.アンコウ uncle あんこう鍋