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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2008.03.11)

和製英語とカタカナ語(3)  前田 正晶

ローマ字式発音または恣意的な読み方:
 これは日本訛りの発音の変形であるとも考えている。この例は私が嫌う割にはそれほど多くはないと思う。簡単に言えばQueen’s accentでは”o”を「オ」といわばローマ字のように素直に発音するが、アメリカ式となるとほとんど「ア」なるようなことを指している。
 例えば「ホリデー」とされているのが実はholidayで、発音記号を見ても実際にネイティヴ・スピーカーの発音を良く聞いても「ハラディー」となっているものである。
 さらにaを素直に「ア」と読まずに「エイ」という発音になる例が多いのも要注意である。なお、英国系の発音では「アイ」となることがあるが、これは訛りであるから除外して良いだろう。
 中には発音が難しく尚かつカタカナ表記も困難で似て非なる表記になっているものがあり、私はこれが最も気に入らない。それは「セキュリティー」となっている
securityや「ユビキタス」になってしまったubiquitous等である。何れも辞書を見て貰いたくなるようなおかしな表記であると信じている。

ルーキー   rookie, rookey, rooky、
【解説】 奇怪である。どこの世界にbookをブークと言う人がいるか?lookと書いて「ルーク」と読むか?発音記号を見て貰いたい。そう言っても、最早定着しているから手遅れか?

パトリオット   patriot、
【解説】  典型的ローマ字読みである。日本語に帰化済み。

ナトー   NATO
【解説】 ローマ字読みである。帰化済み。

ボディーチェック   body search、
【解説】 すでに例に挙げたが、ローマ字読みとして再登場させた。

シンポジューム   symposium、
【解説】 このumないしはiumで終わるスペルのグループには、他にもアルミニューム=aluminum→アルーミナム、アクアリウム=aquarium→アクエアリアム、スタジアム=stadium=ステイディアム、ウラニウム=uranium→ユーレイニアム等がある。

ゲーリー   Gary、
【解説】 これはゲアリーであると思う。偶にはギャリーとしている例もある。面白いことはMaryには「メアリー」があって「メリー」もあること。何を隠そうこの私もゲーリーだと思い込んでいた時期があり、訪ねたゲーリーはいないと言われてしまった経験があった。他に面白かった現象に”Queen Merry”と名付けられた観光バスに乗ったことか。

リコール   recall、
【解説】 欠陥商品の回収ならばリーコルかリーコールに近くなり「リー」にアクセントが来る。リコールだと思い出すことになる。

リサイクル   recycle、
【解説】 リーサイクルなのであるが、最早リサイクルが日本語に帰化を果たしている。ここで面白いと思うことは「レサイクル」と読まなかった点である。こういう柔軟性がたまらない。

ビニール   vinyl、
【解説】 これは間違いが輻輳している珍しくもない例である。これはヴァイニルと読むのだがPVC=polyvinyl chloride=塩化ビニルのことである。我が国では広くプラステイック(=plastics)を全てこれで括ってしまっている。プラスティックスには他にもpolyvinylidene chloride=ポリ塩化ビニリデンもあるし、polyethylene=ポリエチレン等多数あるにも拘わらず。なお、ビニルだけではビニル基のことになると思う。

レギンス   leggings、
【解説】 これはここまで挙げてきたものから外れるが、こういうものもあると思って取り上げた。私は長い間レギンスの元の言葉が分からなかった。必ずしもローマ字読みではないのだが、いつの間にかこのように変化して定着したようである。

ハーレイダビッドソン Harley-Davidson、
【解説】 勿論?かのオートバイのハーレイ・デイヴィッドソンなのだが、これも日本語化済みである。David=ダヴィデはイスラエルの王である。このことは割合に広く知られていたと思うが、それなのに“ダビッド”としたのは何故だろう。

言葉の誤用と借用:
 このグループが最も厄介であると思う。何故ならば造語的な要素も入っているからである。だが、ここには我ら日本人の素晴らしい造語の才能を見出すことができるのだ。しかも多くはそのまま日本語として定着している。
 英語では何と言うかをよく確かめておかれると「会話」の際に安全である。

リニューアルオープン   opening after renovation or refurbishing、
【解説】 これは適切な英語を見付けるのが難しい。パチンコ店などが賑やかに店内改装の後に再開する場合などに使う宣伝文句である。一見英語風だが、どう考えてもおかしい。もし英語国なら何というか考えてみると、”We are renovated and opened.”辺りになるか?同様に「グランドオープン」ものあるが、これも変である。少なくともopenではなくてopeningかreopeningになりはしないか。次の言葉の誤用に入れたくなった。因みに、renewはここで意図されているものと全く異なる意味しかないと思う。

バトンタッチ   baton passing、
【解説】 長い間この言葉をタッチだけでは、バトンを渡していないではないかと揶揄してきた。

テープカット   ribbon cutting、
【解説】 これも面白い。テレビでしかこの儀式を見たことがないが、カットされているのは何時もリボンである。トラック競技でも1着の人が通っていくのはリボンに見えるがテープと言っている。

キャプテンシー   captainship、
【解説】 キャプテンシーは主将としての統率力や指導力を表す時にアナウンサーも解説者も使っている。だが、これは地位ないしは役目を言うものである。正しくはキャプテンシップであると思う。

スリッピー   slippery、
【解説】 「滑りやすい」という意味で、上記同様アナウンサーと解説者御用達である。だが、Oxfordにはslippy言葉は載っていないがslipperyは載せられているが。

ランニングシャツ   sleeveless shirt、
【解説】 どうもこれに当たる英語がないようだ。こういう言葉を当て嵌めていた辞書を何処かで見たことがあったので取り上げた。ここで「ランニング」を取り上げたのは、カタカナ語には屡々登場するからである。それも概ね何か変だなと思わせてくれる例が多いのも特徴である。ランニングコスト=running costがよく使われるが、長い間これをoperating costの誤りであると思っていた。我が国の英和辞典にはrunning costは出てくるが、Oxfordには採用されていない。

シティホテル ?
【解説】 シティボーイなどと同じで、ここまで来ると造語に入れるべきだったかと迷う次第である。ビジネスホテルなども同じ誤りの部類であろう。

ビジネスライク   businesslike、
【解説】 実はこれは立派な英語なのだが、カタカナ語として使われる場合の「冷淡な」という響きはなく、効率的や能率的にという意味である。そう思っている人が多いか?

スナック   snack bar、
【解説】 一言にすればsnackは軽食である。であれば、これはスナックバーとするべきものを省略したと解釈する。

リピーター   repeater、
【解説】 Oxfordには連射可能なガンとあり、ジーニアスには常習犯とある。すると我が国マスコミご愛用にこの言葉は?何でも語尾にerをつければ良いってもんじゃない。シャネラーで味をしめたのか?こういう造語をでっち上げる才能を褒めるべきか、貶すべきか。

フライイング(フライング)  flying、
【解説】 これなどは造語の面白さの最たるものであろうと思う。カタカナ語として使われている場合の正しい英語はfalse startである。だが、flying startというスタートの方法はある。それはスタートラインの前から助走をつけてスタートすることである。それと合図以前にスタートすることを混同して、フライングだけを残したと解釈している。因みにflyingにはどこを探してもフライングの意味はない。

コンプレックス   inferiority complex、
【解説】 劣等感なのだが、何故かinferiorityが省かれてしまった。思うに発音が難しくて仮名書きにできなかったからでは?complexだけでは劣等感にはならないのは言うまでもない。因みに、優越感はsense of superiorityになるようだ。

フリップ   chart or flip chart、
【解説】 テレビで屡々使われている。そもそも「綴じてある紙をめくりながら話をすること」なのだが、何処でどう間違われたのかチャートの意味で堂々と使われている。誰一人とし。て疑わないのが凄いと思う。これは造語の部類に入れてもおかしくないかも知れない。     
(つづく )

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