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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2008.03.19)

和製英語とカタカナ語(4)   前田 正晶

合成語:
これは番外編。私が最も嫌う例を2~3挙げるに止める。

自己ベスト   personal record or one’s record、
【解説】 何もベストなどといわずに自己最高記録で良くはないか?このようにカタカナ語を入れて何となく格好良く、ないしはスマートに見せようとするところが「せこい」と感じさせられて嫌いなのだ。同様に「ベストを尽くす」も嫌いだ。

スチール写真   still picture、
【解説】 私はスチールがstillで静止写真と解るまでに60年以上もかけてしまった。Motion pictureの反対語か?

電子レンジ   microwave oven、
【解説】 何となくelectronic rangeではないかと思わせるが、両方とも違う言葉なのが凄い。Rangeには調理器具の意味があってgas range=ガスコンロなんていうのもある。

アドバイスする   advise or advice、
【解説】 これは何と言って説明したらよいのか迷う。adviceが名詞形でadviseという動詞がありながら、アドバイスと仮名書きにしてその後にご丁寧に「する」をつけている。矢張り漢字の観念から離れ等馴れないのかと思う。他にも、タッチする、オープンする、リードする、アップする、ダウンする等がある。
興味を引くのがアップ=upとダウン=downだけは副詞か前置詞である点だ。勿論エレベーターの「上がり」「下り」のように名詞形で使われている場合もあるが、そこまで考えて合成語に仕立てたならば、矢張り先人の知恵には敬意を表したい。

チョイスする   make a choice、
【解説】 難しく言えばchooseは「2つのものまたは沢山の中から自分で決めて選ぶ」ということだから、これには言葉の誤用はないと思う。だが、この合成語は不思議なのは「チョイスした」と使われることが多いので、それなら”chose”=チョウズだろうに、と思う。こういう合成語の場合に過去形や過去分詞が採用される例が少なく、概ね動詞の原形が採用されていることだ。テレビに登場されるタレントはただ単に「チョイス」とだけ言うことも間々ある。

結び:
手当たり次第に取り上げてみたが、これ以外にもまだ沢山あると確信している。私はこういう言葉を発見するのを楽しみにしている。そして、カタカナ語を使うことを極力避けてきた。

その理由はこれらに頼ることが日本語の語彙が豊富ではないことを示している気がするからである。何はともあれ、カタカナ語を見たら先ず本当に英語であるかと、正しく使ってあるか否かを確認して頂きたい。
ここまでは極力英語とそれらしきものを取り上げたが、他にもフランス語(例えばアンケート)、ドイツ語(例えばペーハー)、イタリア語(例えばパスタ)も外来語として戸籍を得ていると思う。

和製英語(造語):
ノートパソコン   notebook computer、
【解説】 パソコンがpersonal computer(=PC)でそれを短縮したものだが、notebookまでも短縮してしまった。そして戸籍まで与えるところに凄味がある。

ケースバイケース   depending on each case or “It all depends.”、
【解説】 「時と場合による」ということなのだがcase by caseでは「一件ごとに」になってしまう。この誤りに誰も気付かず、戸籍を与えてしまったことは罪深い。「英会話」中に誤用しないこと。

アットマーク   at sign、
【解説】 勿論「@マーク」である。signも「サイン」として野球で誤用されている。ここではマークにその座を奪われていた。

サイン  signature or autograph、
【解説】 これはかなり微妙な言葉だと思う「署名する」の意味ならばsignが動詞であるが、署名はsignatureで、自筆でした署名をautographと言うのだと思う。「サインしてください」と願うならば「サイン」というのはおかしい気がするのだが。英語は面倒くさい。直ぐ上ではsignが信号か合図であるのに。野球で捕手が出すものを「サイン」と言っているのはsignalのことだと聞いている。そうでしょう、まさかキャッチャーがピッチャーに署名を送らないでしょう!

ジャグジー   Jacuzzi、
【解説】 ジャクージである。確か人に名前だった。何でこれがジャグジーになり、戸籍まで獲得したのだろうか?誤読という欄を設けなければならないか?こういう誤読の例にグラフィティーがある。graffitiは「グラフィーティー」という発音だが、誰かが導入時点でアクセントの位置を変えて和製英語にしてしまった。

ホッチキス   stapler、
【解説】 Hotchkissはこの器具を考案した人の上の名前(=苗字)である。「会話」の中でこんな風に言っても通じません。

プッシュホン push-button phone
【解説】 ボタンの掛け違いでボタンを飛ばしてしまった。思うに「プッシュ・バトゥン・フォーン」が言いにくかったのであろう?

コンセント   socket or outlet、
【解説】 英語にconsentという言葉があるが、それは主に「同意」として使われていると思う。どうしてこうなったのだろう?

コインランドリー   coin-operated laundry or Laundromat、
【解説】 多分、真ん中のoperatedが難しいとの判断が働いたので省いたのであろう。国立国際医療センターの地下にあるコインランドリー室の看板には”
Laundromat”とある。流石である。

コインロッカー   coin-operated locker、
【解説】 ここでもoperatedは嫌われた。これでは長すぎるので、単にlockerだけでも通じると思う。因みに「電池式」はbattery-poweredと言うようだが、幸いなことに「電池洗濯機」も「電池ロッカー」もなかった。

ローマ字式発音:
ウイルス virus、
【解説】 これには困った。本当は「ヴァイラス」なのである。元はラテン語と辞書にある。取りあえずここに入れて処理する。その昔は「ヴィールス」だったからローマ字読みと言って良いだろうが、近年は「ウイルス」に変わってしまった。

言葉の誤用:
ナイーヴ naive、
【解説】 これが続編の目玉である。我が国では広く「無邪気」か「純真」の意味で戸籍を与えて、遍く普及してしまった。誠に困った現象である。ほとんどの場合「horse deer」の意味で使い、相手ないしは第三者を貶している言葉である。
目の前にいる人に”You are naive.”等と言ったら喧嘩を売っているにも等しい暴言となると心得ていて欲しい。使わないようにして頂きたい。
私は使ったこともないし、使う機会も勇気もなかった言葉である。それが我が国で広まってしまったのは不思議な現象である。ご参考までにOxfordの説明を引用しておく。
”(disapproving) lackingexperience of life, knowledge, or good judgement and willing to believe that people always tell you the truth”となっている。何処にも無邪気の意味はない。  
【前田正晶さんは長い間、英語使うビジネスの第一線で活躍をしてきました。前田さんの英語学習法から実際に英語を使っていた頃の思いをこめた異色のエッセイです。わたなべりゃうじらうメイル・マガジン「頂門の一針」より転載、主宰者ならびに執筆者許可済み】

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