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フォーラムレポート

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英語教育東京フォーラム(2008.10.10)

教材の選び方、作り方 - 授業力を高める大きなポイントです

       大釜 茂璋(NPO法人 教育情報プロジェクト代表)

 幼児や子どもたちの間で論語を教材にした指導が増えているという。子ども向けの論語塾も近く開校するらしいと新聞にも出ていた。ビジネスマンの間でも、論語を学ぶことが静かなブームを呼んでいるらしい。論語の素読を実践している幼稚園もあるという。園児たちが揃って、大きな声でリズミカルに読めば、たとえ意味がわからなくても陶然として、先生のリードに合わせて読み進むという。まず声を出してみんなで読むことが大事。意味なんて分かるようになってから教え込めばいいのだ。

 確かにNHK教育テレビの幼児番組などでも、四字熟語をゲームにこしらえながら取り上げている。必ずしも論語だけではないのだ。子どもたちは、恐らくは意味も分からず嬉々として、これらの熟語をそらんじ、大声で飛び跳ねている。まさに樂習そのものだ。

 さてここで、論語の学習を取り上げようとしてこの文を書いているのではない。とかく私たちは、子どもの学習はこうあるべきだ、こうしなければならないといった先入観に囚われ過ぎるところがあることに、ちょっと触れたかったのである。

 私たちはこれまで、論語ば難しい。そういうものを教材にすることは、単に子どもに勉強を強いることになり無意味だと教えられてきた。それが子どもを勉強嫌いにする元凶だと結論付けられた。漢字だらけの論語など子どもにわかるはずがないとの先入観で、決めつけてしまっていた。

 しかしそれは、何も論語に限ったことではないと言う。「声に出して読みたい日本語」などで知られる明治大学の斉藤孝先生によると、実際小学3年生あたりに読ませてみると、小林秀雄の随想「人形」や志賀直哉の小説「清兵衛と瓢箪」などの人気が高いという。「清兵衛と瓢箪」などは小学2年生でも十分に理解して読むという。子どもたちが柔軟に文章を吸収する力には、斉藤先生自身も驚いたという。

 「斉藤メソッド」で小学生の指導も手がけている斉藤先生は、小学生4年生、年齢でいえばスポーツにせよ勉強にせよ10歳あたりからの数年間が、基礎を鍛え上げるためのゴールデンエイジだと言う。子どもの世界から大人の世界へ移行する、最初の大きな分水嶺である。

 これは英語指導でもよく言われる。「中2の壁」がそれだ。この壁をいかに上手に乗り越えさせることが出来るかが「教師の腕・力」となる。教職経験の短い人にこの壁を乗り越えさせる技術が身についているかどうかは、誰もが悩むところである。教科書はまずいいとして、壁を乗り越えていくための教材や器具類。それらを上手に使いこなして授業を構築するテクニック。生徒は教師を選ぶことは出来ないのだ。

 こういう指導法はベテラン教師の体験やその場に応じた創造力や行動力、授業を始めるにあたってのイントロの手際、話しの進め具合、これらの一つひとつが生徒の心に伝わり興味を持ち、学習意欲につながっていくのである。

 活力ある授業は、これらを総合的に組み合わせて成立するに違いない。両国高校附属両国中学校の山本崇雄先生は、生徒が乗ってくる授業は、ベルが鳴って最初の5分間で決まるという。それこそベテラン教師の真骨頂というものだ。

 ところで、
・扱う教材が本校の生徒には難しすぎると決め付けていませんか。
・教える本人が面白いと思う教材を使っていますか
・教材は出来合いだけでなく、生徒の顔を思い浮かべながら自分で作ることもしていますか。
・その日の授業の目的と成果を前以って計画を立てていますか
・今日の話しのイントロ、話しの進め方を予め考えて授業に臨みますか
・生徒を誉めるポイント、誉める方法を予め考えていますか

 11月期e-prosフォーラムで講師を務めてくださる稲葉隆浩先生、阿部一先生の教材作成と活用法は、これらの悩みや疑問に熱くお応えします。12月フォーラムの田尻悟郎先生の講座とともに、絶対に聞き逃すことはできません。ぜひご参加ください。

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