もっと身近に誰にでも!

フォーラムレポート

一覧へ戻る

英語教育東京フォーラム(2011.10.20)

田尻悟郎先生から、最近先生が携わった活動について含蓄ある詳細なメールを頂きました。
「皆様」と不特定多数宛の発信でしたから、その一部をダイジェストして転載いたします。

10月19日(水)18:55~19:25 
NHK教育テレビ バラエティ番組『Rの法則』
   <田尻悟郎先生番組制作・出演>
                                   
 田尻先生はここ2か月間、教材3冊とNHK教育テレビの番組制作に負われていたとのご報告です。教材というのは教科書本文を使った活動集であり、NHKの教育テレビの番組は、『Rの法則』という水曜日の18:55~19:25に放送されるバラエティ番組の制作とのことです。

 教材はほぼ校了したとありますが、中学教科書を3年間分、全レッスンで本文を理解・習熟・応用させるための活動を考えたもので、"脳が筋肉痛になった"と嘆いていますから大変な仕事だったようです。改めて、週3時間と4時間の違いを体感したとありますから、中学校の新学習指導要領に沿った教材とわかります。

 ところで番組のほうは、先月NHKの渋谷スタジオで中高生を相手に、授業らしきものをしたとのことで、それがものの見事に失敗したとあります。発音をよくするという講座だったそうですが、ほとんどよくならなかったと、これは田尻先生ご本人の感想です。

 しかしこの感想の分析が大変参考になります。失敗だったとする田尻先生の状況把握と分析、その理由は次の通りです。以下は田尻先生のメールから引用します。

 約60人の中高生は短時間で沢山の情報が与えられ、しかもそれが音声だけでしたので、完全に理解できなかったのです。プリント等で情報をまとめたものを用意しましたが、下を向いてしまうということで参加者には配布されませんでした。さらに消化不良のままで発音させられたので、しどろもどろになってしまったのです。いわゆる「指導なきテスト」をしてしまったわけであり、できなくて当然ですよね。

 このことは図らずも私が常に主張している、「教えるだけでは生徒はできるようにならない。一人ずつ見てあげて、できないところを発見し、その原因を究明し、対応策を授けてできるようにしてやることこそ教師のなすべきことである」ということを、私自身が十分にできなかったことを証明しています。

 一発で理解して応用できる生徒ばかりなら、教師に苦労はありません。しかし、そうでないのが現実。それにフォニックス(発音と文字の関係)は、すぐに理解できる生徒は50%であり、残りの50%は量をこなすうちに分かり始めます。
 
 単語を正しく読めない生徒が多いのは、最近の傾向です。読み方を教わらない上、教師の説明型の授業が大半を占めているので、生徒はノートを取ることが英語の勉強だと思っており、トレーニングはほとんど行なっていないからです。

 とは言え番組スタッフは、高校3年ですでに指定校推薦で大学の合格をもらっている子も含め、最近の生徒はここまで文字が読めないのかと驚いたようです。私も、これぐらいは分かるだろうと高をくくっていました。読み方のルールを教えた後でも、lace,paste,ridesなど5文字以下の単語も正しく読めませんでした。日本の英語教育は教えることに主眼が置かれていて、できるようにすることがなおざりになっています。これでは学力もつかないでしょう。学ぶ喜びも少ないと思います。

 いずれにしても、授業の根本とは何か、授業はどうあるべきかを再認識させられる出来事でした。(引用終わり)

 10月19日と26日の2回、いずれも夕方の6時55分から30分間、NHKの教育テレビで放送されます。『Rの法則』のスタッフがどう編集しているか注目されますが、田尻先生の上記分析を読んだ後でこの番組を見ると、それなりの指導法を教訓を学び取ることが出来るように思います。ぜひ見落としのないよう、必見をお勧めします。

 なお田尻先生が部長に就任している関西大学野球部は、関西学生野球秋季リーグで5勝7敗の5位に終ったとあります。部長としてなるべく選手の近くにいてやり、励ましてやるようにしていますが勝たせることはできません。相手も本気で向かってくるからと言っていますが、勝つのは難しいものだと結んでいます。

 勝負は勝つ者と負ける者に分かれます。その点授業は、教師も生徒も同時に勝利者になれる。その気になれば、こんなに楽しいことはないと思います。今日はいい天気。大阪は爽やかに晴れていますと、いつもの田尻先生に戻って結びは晴れやかでした。
      (NPO法人教育情報プロジェクト 大釜 茂璋)  

一覧へ戻る


top